2015 Fiscal Year Annual Research Report
投票外参加の日米比較:確率標本によるインターネット調査を用いた因果推論の精緻化
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15H03317
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
飯田 健 同志社大学, 法学部, 准教授 (50468873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 由隆 同志社大学, 法学部, 教授 (40218152)
松林 哲也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (40721949)
三村 憲弘 武蔵野大学, 法学部, 講師 (40453980)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 投票外参加 / インターネット調査 / 確率標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の成果は主として次の3点に集約される。第一に、日本において確率標本を用いたインターネット調査のパイロット調査を実施した。地図情報を用いて無作為に抽出した標本(n=60人×全国25地点=1500)に対してポスティングにより、インターネット調査に誘導し調査を行った。調査期間はポスティングも含め、2016年1月31から2月14日にかけての2週間であった。調査項目は政治意識、投票外参加も含む政治参加、団体所属などであり、一部実験も含めた。 第二に、アメリカにおいて、通常のインターネット調査を実施した。全米のデモグラフィックに合わせてQualtrics 社の登録パネルから年齢、性別、地域によって選ばれた満18 歳以上の男女からなる割り当て標本(n = 399)に対して調査を行った。調査期間は、2015年12月14日~15日の2日間であった。調査項目は政治意識、投票外参加も含む政治参加について調査を行い、一部進行中の共和党予備選挙に関する実験も実施した。 最後に、リスク態度と投票外参加についての理論的検討を行い、導いた仮説を既存の日本の世論調査データを用いて検証した。分析の結果、理論的な予測どおり、不確実性を好むリスク受容的な態度をもつ有権者ほど、デモなど投票外参加について有効性を見出すこと、そしてその傾向は野党支持者、無党派層、与党支持者の順に強いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要で述べた3つの点に触れつつ、以下、到達度について述べる。第一に、研究計画どおり、日本において確率標本を用いたインターネット調査のパイロット調査を実施したことについて、これは当初より平成28年度以降の調査実施上の技術的な課題を探るためのパイロット調査であったが、結果として予想以上に多くの課題がみつかった。最も大きな課題は、インターネットに誘導できた人数が少なかったことである。これに対してどのような方法で参加率を挙げられるか検討するために、当初金銭的インセンティブの有無、リマインドの有無などによる違いを確認する予定であったが、予算的制約の都合上、金銭的インセンティブ有・リマインド無の形式のものしか実施できなかったため、善後策を議論する上で必ずしも十分な材料が得られなかった。したがって、この点については若干の遅れが見られると考える。 第二に、アメリカでインターネット調査を実施したことについて、これは平成29年度以降に実施予定だったものであったが、今年度小さい標本規模ではあるものの前倒しで実施することができた。また、例年よりも白熱する共和党予備選挙のタイミングに合わせたため、貴重なデータを得ることができた。したがって、この点については予定以上の進捗が見られたと言える。 最後に、リスク態度と投票外参加についての理論的検討を行い、導いた仮説を既存の日本の世論調査データを用いて検証したことについて、これは当初の予定どおりであった。しかし思ったより明確な結果が得られたため、今後の理論的検討が容易になった。したがって、この点については予定以上の進捗が見られたと言える。 以上を総合して、「(2)おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの到達度で述べた3つの点に触れつつ、以下、今後の研究推進方策等について述べる。第一に、日本において確率標本を用いたインターネット調査のパイロット調査を実施したことをふまえて、本調査に向けて予定通り平成28年度においても第二段のパイロット調査を実施する。実施準備の段階においては、平成27年度のパイロット調査の仕様の確認や、実際に得られたデータからインターネット調査への参加率が低かった原因について検討し、改善を図る。とりわけ、金銭的インセンティブの与え方、リマインドの与え方について再検討を行う。 第二に、アメリカでインターネット調査を実施したことをふまえて、得られたデータの分析を行いつつ、人々の間での投票以外の政治参加がアメリカにおいて何によってもたらされるのか、先述の理論的枠組みを当てはめ、検討を行う。とりわけ、日本に比べて活発とされるアメリカの投票外参加の決定要因について、日本との相違を意識して分析を進める。金銭的・時間的な余裕があれば今年度もアメリカでインターネット調査を行う。 第三に、リスク態度と投票外参加についての理論的検討を行い、導いた仮説を既存の日本の世論調査データを用いて検証したことをふまえて、これを確率標本によるインターネット調査の本調査にどのように落とし込むか検討する。単に質問項目だけでなく、より厳密に因果関係を検証するための実験デザインについても検討する。そして可能であれば、それらを平成28年度のパイロット調査に含める。
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Research Products
(12 results)