2016 Fiscal Year Annual Research Report
投票外参加の日米比較:確率標本によるインターネット調査を用いた因果推論の精緻化
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15H03317
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
飯田 健 同志社大学, 法学部, 准教授 (50468873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 由隆 同志社大学, 法学部, 教授 (40218152)
松林 哲也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (40721949)
三村 憲弘 武蔵野大学, 法学部, 講師 (40453980)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 投票外参加 / インターネット調査 / 確率標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の成果は主として次の3点に集約される。第一に、日本において確率標本を用いたインターネット調査のパイロット調査第2弾を実施した。今回は、平成27年度のパイロット調査第1弾の結果をふまえて依頼方法、依頼文書、謝金支払いの方法など改善すべき点を改善し、さらに調査票の封入をランダムに行いその効果を見るなど新たな試みを加えた上で、2017年2月4日から2月28日までの期間、京都府、大阪府、兵庫県の近畿3府県から無作為地図抽出によって選ばれた有権者(40人×27地点=1080人)を対象に調査を実施した。また、依頼を行った際の状況(訪問回数、手渡しか、不在による投函かなど)や、住居形態など調査員による調査環境データも収集した。 第二に、2016年アメリカ大統領選挙に合わせて、アメリカにおいてインターネット調査を実施した。全米のデモグラフィックに合わせてQualtrics社の登録パネルから、年齢、性別、地域によって選ばれた18歳以上の男女からなる割り当て標本(n=629)に対して調査を行った。調査期間は大統領選挙から約1週間後の2016年11月15日から17日の3日間であった。 第三に、リスク受容的態度が投票外参加に対して正の影響を与えるとの研究結果を書籍の1章の形で公表した。これは日本のデータを対象に平成27年度に行った、リスク態度と投票外参加の関係に関する理論的・実証的研究結果をまとめたものである。またこの点について、より厳密に検証するべく今後の実験の枠組みについて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要で述べた3つの点に触れつつ、以下、それぞれ到達度について述べる。第一に、研究計画どおり、日本において確率標本を用いたインターネット調査のパイロット調査第2弾を実施したことについて、平成27年度のパイロット調査第一弾で明らかとなった多くの課題(調査協力依頼文書、謝礼の支払い方法、依頼方法等)の改善をそれぞれ行った結果、回収率が大幅に改善された。また調査員による調査環境データを収集しため、調査に参加しなかった対象者についてもある程度データが得られた。さらには、標本を無作為に分けて一方には調査票を封入するという試みを行ったため、調査票の有無が回収率に影響を与えるか検討できるデータが得られた。 第二に、アメリカでインターネット調査を実施したことについて、昨年度前倒しでアメリカ大統領選挙予備選挙のシーズンに行ったのに続いて、今回はアメリカ大統領選挙に合わせて実施できたため、トランプ候補者当選を可能にした要因について検討できる貴重なデータが収集できた。また、その中には日米同盟に対する支持など、日本にとって大きな関心ではあるが、アメリカで実施される通常の世論調査では含まれない質問項目が含まれるため、日本の関心に特化したオリジナルなデータセットとなった。 第三に、リスク態度と投票外参加について理論的・実証的研究結果を公表できたことは、当初の予定に先んじたことであった。これをふまえてさらに先に進めるべく、サーベイデータ分析以外の、実験などより厳密な手段を用いて検討することを検討し始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの到達度で述べた3つの点にふれつつ、以下、今後の研究推進方策等について述べる。第一に、日本において確率標本を用いたインターネット調査のパイロット調査を平成28年度までに2つ実施したことをふまえて、本年度いよいよ本調査を実施する。本調査実施にあたってはまず、これまでのパイロット調査から得られたデータを用いて、回収率に対する謝金支払方法改良の効果、調査票封入の効果、依頼文書改良の効果について検討し、最も効率的な実施方法を探る。さらに、調査環境データを用いて調査に協力してくれた対象者とそうでない対象者との違いについて分析し、回収率を上げる更なる有効な手段は無いか検討する。これらの検討をふまえて本調査を2019年秋から冬にかけて実施予定である。 第二に、アメリカでインターネット調査を実施したことをふまえて、昨年度に引き続きアメリカにおいて日本よりも投票外参加が活発な理由について検討を行う。とりわけトランプ支持者という草の根の保守の有権者がどの程度そしてどのような投票外参加を行っているのか、検討を行う。また、本年度もアメリカでのインターネット調査を実施する。 第三に、投票外参加をもたらす要因に関する理論的検討について、本年度は当初の研究計画書に記したことを発展させ、投票外参加の二次元性について検討を行う。研究計画書では、投票参加と投票外参加が政治参加のモードとして異なる次元を構成していることを示した上で、投票外参加はリスク態度によって説明されることを論じたが、これをさらに発展させ、投票外参加の中にも実はさらに次元が存在している可能性について検討を行う。例えば、学歴や年齢によって、参加しやすい投票外参加の手段が異なるのではないか、という可能性である。
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Research Products
(14 results)