2017 Fiscal Year Annual Research Report
専門職倫理教育の相互行為分析-医学教育におけるロールプレー授業の研究
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15H03411
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
樫田 美雄 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (10282295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋谷 直矩 山口大学, 国際総合科学部, 講師 (10589998)
宮崎 彩子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (20298772)
中塚 朋子 就実大学, 人文科学部, 准教授 (50457131)
藤崎 和彦 岐阜大学, 医学部, 教授 (60221545)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロールプレー / 医療面接 / 相互行為分析 / エスノメソドロジー / 会話分析 / ビデオ・エスノグラフィー / アウトカムベースドラーニング / ダイバーシティ保存型教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「相互行為分析」という手法で,「日本の医学教育におけるロールプレー」の未来を,「ダイバーシティ保存型教育」に対応した「アウトカムベースドラーニング」という方向に展望することである. 平成29年度も,この立場から,科研費メンバーが集まっての研究会を合計5回開催し,模擬患者を利用したロールプレー場面と,学生同士が役割交替を行いながら実行したロールプレー場面の分析を行った.また,この研究会活動と並行して,トランスクリプトの精度を上げる取り組みも行い,訓練を積んだ樫田研究室の研究室員が繰り返しチェックする,分析用データ準備体制を確立した.この調査研究分析活動の結果,以下の大きな達成をえることができた.すなわち,①非定型発達と思われる医学生が,教員から期待されていない課題を,自らのロールプレーの課題として活動していたケースに対して,そのような,通常の指導が困難なケースであっても,当事者的説明を踏まえて,学生の志向性を尊重した指導体制を組んで,再度ロールプレーを実施したところ,模擬患者からの評価が向上する結果がえられた.②この展開の全体を,指導抵抗性のある学生に対する,ダイバーシティ保存型教育として定式化し,論文化した. この成果は,2017年3月24日の研究成果還元のためのシンポジウムで発表され,また,晃洋書房から,『医療者教育のビデオ・エスノグラフィー』というタイトルで一般書として刊行された. また,医学教育にビデオを取り込むことの意義が大きいことが判明したことから,全国のすべての医学部医学科(防衛医科大を含む82箇所)に,郵送でアンケート調査表を送り,医学教育において,ビデオカメラを利用して教育をしているかを問う調査を行った.集計結果については,2018年度前期に刊行予定の科研費報告書に掲載される見込みになっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年度の春から夏にかけては,晃洋書房からの出版に向けた研究会と原稿のとりまとめ活動を主として行った.収集されたデータを一覧表にして,比較を容易にした. 科研メンバーから1名(藤崎和彦)が監修者に,3名(樫田美雄,岡田光弘,中塚朋子)が編者になり,用語の統一,水準の確保等に分担して当たった. 2017年度の秋から冬にかけては,全国のすべての医師養成機関と,学部1年次定員が120名を超える看護師養成機関等(この“等”には,日本医学教育学会の理事・監事と,日本保健医療社会学会の理事が入る)に,ビデオを用いた相互行為分析という方法を知っているか,知っている場合には,実行しているか.実行に困難があるとすればどのような点にあると理解しているか,等々のアンケート調査を行った.また,単なる意識調査にならないように,エスノメソドロジーの専門書の翻訳である『診療場面のコミュニケーション』(勁草書房)を同封し,この著作の各章に関する理解や不満をも問うようにした.この量的調査の結果については,現在集計中であるが,分析の仕方に不案内であることなどが,ビデオを教育に用いない理由であるとされ,したがって,適当なインストラクション体制が整備されれば,ビデオを用いた医療人養成体制は,大いに普及する可能性があることが分かった.また,このアンケートに,2017年3月24日の研究成果公開シンポジウムの案内チラシを同封したところ,全国の大学から参加希望がだされ,結果として,20人強の出席があり盛況だった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者である樫田は,日本保健医療社会学会長,日本医学教育学会プロフェッショナリズム・行動科学委員会委員および,日本福祉社会学会研究委員会委員として,複数学会が連携しての,ビデオを用いた専門職研修の技術説明会が開催可能となるよう根回し中である.すなわち,日本の専門職養成教育は,専門職がコミュニケーションをする相手の知識水準があがってきている中で,従来のような「プロ-素人」モデルでのコミュニケーションでは,業務遂行に支障をきたすようになってきているのである.そのような中,改革を強いられており,その状況に我々としても遅れることなくコミットしていきたいと考えている.つまり,いずれの専門職も他の専門職(知識を十分持った市民をも含む)とのコミュニケーションの形で,自らの職務的能力を発揮するように訓練されていかなければならないのである.この方向への教育改革を後押しするべく,我々は,総合的な研究広報活動をしていく予定にしている.具体的には,各地に出向いてのビデオセッションや書籍/論文説明会を行うことと,それぞれの研究室で,更なる研究を行うことである. (実際,研究代表の樫田は,2018年4月に,久留米大学医学部看護学科の教員研修FDに呼ばれ,ビデオ・エスノグラフィーの初歩を講じた.) 平成30年度の予定としては,昨年から準備を進めている,2冊目の専門書の出版に向けて準備をするとともに,本科研も最終年度なので,同時進行で,科研費報告書の作成も行って行きたい.大量に作成したトランスクリプトのうち,晃洋書房の本で言及することができた部分はかなりすくなかった.したがって,今回の科研費報告書には,添付DVDを付けて,この利用されていないトランスクリプトの電子データ掲載を行いたい.この作業に,2018年度の前半を使う予定である.
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Research Products
(7 results)