2015 Fiscal Year Annual Research Report
国際連携研究を土台とした生活者育成をめざすレッスン・スタディのモデル構築
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15H03505
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
貴志 倫子 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60346468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒井 紀子 福井大学, 教育地域科学部, 特命教授 (90212597)
井元 りえ 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (30412612)
亀井 佑子 愛国学園短期大学, その他部局等, 教授 (90557331)
羽根 裕子 名古屋文化短期大学, その他部局等, 准教授 (00748098)
一色 玲子 聖カタリナ大学短期大学部, その他部局等, 助教 (30582241)
鈴木 真由子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60241197)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 各教科の教育 / レッスン・スタディ / 家庭科 / 全国組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.レッスン・スタディの理論的整理と,その今日的意味の把握 日本の授業研究は、理数教育を中心に諸外国に発信され、「教師の授業力向上」と「教師集団の協働性の向上」という両側面から国際的に評価されていた。日本から発信された授業研究が各国でレッスン・スタディとして広まっていく中、日本独自の授業研究の定義の問い直しや授業理論の再検討の必要性が教科教育の立場から提起されていた。家庭科関連教科について、諸外国では学習指導案や教材の共有が大学や教育センターで行われていることが分かったが、レッスン・スタディの先行研究は見当たらないことが明らかとなった。一方、日本の家庭科では、学校種別に重層的に組織化され,授業研究が実施されていた。荒井他(2013)を始め授業研究に焦点をおいた研究はみられるが、国際発信はほとんど行われていないことが明らかになった。諸外国の家庭科関連の研究者及び教員への予備調査の分析により、日本の授業研究への関心と情報交流の必要性が認められた。
2.日本の家庭科の授業研究の実際 全日本小学校家庭科教育研究会、全日本中学校技術・家庭科研究会、全国家庭科教育協会などの組織を対象に、組織等の公的性(私的から公的組織まで)や組織の管轄範囲(校区から全国まで)を指標として小中高校の校種別に分析した。さらに、授業研究のサイクルのうち、特に省察の部分に着目し、複数の事例を授業変革の手立てがとられているかの視点から検討した。その結果,家庭科の授業研究の特徴として、私的から公的、また学校レベルから全国レベルまで、多様な形態で授業研究がなされていることが明らかになった。多くの場合、教師と専門家の連携が取られ、詳細な学習指導案が作成され、授業後の振り返りが協議会や研究発表、報告書作成など多様な方法で、丁寧になされており、授業の向上に寄与していることがうかがわれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、次の3つに着手している。1.文献研究等による、世界の新たな各種学力論をもとにした「責任ある暮らし」を実現する生活者に必要な能力についての整理,2.文献および質問紙調査による、日本と諸外国の家庭科カリキュラムの最新情報の収集と教育課程の把握と分析と,1.の能力の視点からみた、諸外国の家庭科カリキュラムの比較検討,3.諸外国の家庭科におけるレッスン・スタディの現状について、質問紙調査、面接調査の実施とその分析である。 具体的には、H27年3月に実施した国際学力の動向に関する専門家へのヒアリングと各国家庭科のカリキュラム調査(10月フィンランド・スウェーデン、2月イギリス、3月シンガポール、3月デンマーク)、H27年8月の国際学会等の機会を利用した各国の家庭科教育関係者への質問紙調査および面接調査の分析である。家庭科における学力論の動向と、各国における学習指導案の共有や授業交流、実践研究のプロセス等について順次、結果をまとめている。これに並行し、日本の家庭科の授業研究やカリキュラムを海外に発信する内容の選定に関し、H27年度に明らかにした日本の家庭科の授業研究の特性と課題を、公開授業の担当者や指導助言の研究者など異なる視点から、より具体的に把握するため、事例研究による授業改善過程や教師の成長について研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の研究成果を国内外で発表する。とくに8月に韓国大田で開催される国際家政学会では, H27年度に先行実施した諸外国の家庭科におけるレッスン・スタディに関する調査をもとに精査した調査票を持参し,調査対象国の拡大をはかる。すでに回答を得ている国に対しても,研究者と教育実践家など立場の異なる対象者から複数の回答を得るようにし,授業研究の情報を多角的にとらえる計画である。 調査により各国の家庭科教育のキーパーソンとの交流を深め,諸外国との授業研究を通した相互交流の具体的な方法を検討する。国際連携をはかり、レッスン・スタディのモデル構築に発展させる計画である。
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Research Products
(9 results)