2015 Fiscal Year Annual Research Report
癌治療用microRNAを内包した細胞膜透過性を有する人工ウイルス殻の創製
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15H03838
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松浦 和則 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60283389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 崇 鳥取大学, 農学部, 助教 (30585584)
三浦 典正 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30325005)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体材料 / ペプチド / 自己集合 / マイクロRNA / 細胞膜透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞透過性His16ペプチドをC末端側に有するβ-Annulusペプチド(40残基)をFmoc-固相合成法により合成し、逆相HPLCで精製、MALDI-TOF-MSで確認した。このHis16-β-annulusペプチドは、水中で自己集合して50-70 nm程度の球状集合体を形成することが動を動的光散乱(DLS)および透過型電子顕微鏡(TEM)観察からわかった。これをTAMRAで蛍光ラベルした23nt一本鎖DNAと複合化したところ、DLSおよびTEMから100 nm程度の球状複合体が観察された。また、蛍光相関分光法により、ペプチド濃度100 uM以上でDNA-ペプチド複合体を形成することがわかった。 この複合体をHT1080細胞に導入し、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)観察したところ、DNA単体やHis16を有さないDNA-ペプチド複合体と比べて、取り込み効率が向上することが示唆された。また、細胞内に取り込まれた複合体の細胞内局在を解析したところ、複合体の大部分は細胞質には移行せずエンドソーム内に局在することが示唆された。 さらに、がん治療用micro-RNA(miR-520d-5p)の癌の正常化に関するメカニズム解析を行った。その結果、1) P53が発現誘導されることと、2) 脱メチル化によるリプログラミングが主な誘導であり、この中心的役割を果たす遺伝子群を同定した。その効果を高める遺伝子群も数種類同定し、520d-5pと同等の効果もしくはピンポイントの現象の再現には至っていない。しかしin vivoで癌腫非形成の成果を達成し得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞透過性His16ペプチドを有するβ-Annulusペプチドの合成ならびに蛍光ラベルDNAとの複合化に成功し、HT1080細胞にある程度取り込まれることが明らかになった。DNAの複合化率、細胞への取り込み効率、細胞内における細胞質への移行効率が十分ではないため、今後、分子設計の見直しも含めて検討する。また、520d-5pの効果の再現検討を他の因子で行い、腫瘍非形成パターン(87%)と同等の再現を達成できた。肝がんにおいて肝組織や奇形腫形成を誘導する遺伝子の組み合わせを検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
β-AnnulusペプチドのN末端にカチオン性のLysを導入したHis16-β-annulusペプチドを合成し、核酸をより複合化するような分子設計に変更する。さらに、エンドソーム崩壊ペプチドを融合したβ-annulusペプチドを合成し、His16-β-annulusペプチドと混合することにより、細胞膜透過能に加えてエンドソーム脱出能(細胞質移行能)を強化した人工ウイルス殻を作出する。また、蛍光標識DNAの替わりにmicroRNAを内包したHis16搭載人工ウイルス殻を自己集合により構築し、その水中での物性評価(DLS, TEM, ζ電位測定)ならびに、細胞膜透過性を評価する。His16搭載人工ウイルス殻によって細胞内に導入された蛍光標識microRNAが、細胞質へ移行しているかの確認を共焦点レーザー蛍光顕微鏡(CLSM)により解析する。さらに、がん治療用micro-RNA(miR-520d-5p)の正常化メカニズム解析に関して、3種類のメチル化酵素や3種類のヒストン蛋白、520dの直接的標的遺伝子3種類、転写因子1種類を用いて、520d-5pと同等のin vivo効果を再現するための検証を行う。
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Remarks |
松浦和則 日本化学会 第33回 学術賞受賞(2016年3月26日) 岩崎崇 日本海新聞(2015年5月27日)読売新聞(2015年6月16日)掲載
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Research Products
(37 results)