2017 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子によるRNAポリメラーゼの構造変化と転写制御のメカニズム
Project/Area Number |
15H04344
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
関根 俊一 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, チームリーダー (50321774)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | RNAポリメラーゼ / 転写 / 転写因子 / Pol II / クライオ電子顕微鏡 / X線結晶構造解析 / 転写伸長 / 転写終結 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子の転写は、転写開始・伸長・終結からなる複雑なプロセスである。RNAポリメラーゼ (RNAP) は、それ単独では遺伝子の転写を遂行することはできず、多くの転写因子がRNAPと複合体を形成してその機能を補助することで転写は達成される。転写伸長や休止、終結におけるRNAP複合体構造および転写因子等による制御のメカニズムを解明するために、本年度は以下のように研究を進めた。 転写伸長因子が転写の休止・終結を抑制し、プロセッシブな転写伸長を保証する仕組みを解明するために、転写伸長因子を結合した状態の転写伸長複合体の構造解析を行った。3種類の転写伸長因子Spt4/5, Elf1, TFIISを結合した酵母のRNAポリメラーゼII (Pol II) 転写伸長複合体の構造を、X線結晶構造解析とクライオ電顕単粒子解析によって解明した。Spt4/5とElf1は、核酸結合部位付近に結合し、DNAやRNAを導くトンネルを形成して転写伸長に特化した複合体を確立しており、細胞内で働いている状態に近いRNAPの姿が初めて明らかになった。また、NusGないしRfaH、転写伸長を促進するファージ因子gp39を結合した状態のRNAP転写伸長複合体のクライオ電子顕微鏡解析ないしX線結晶構造解析を進めた。 転写休止・終結のメカニズムを明らかにするために、転写休止・終結に関与する転写因子を結合した状態の転写伸長複合体やヘアピン等の二次構造を含むRNAを結合した転写伸長複合体を再構成し、電子顕微鏡解析を進めた。また、細菌RNAPとリボソームが組み合わさって形成される転写-共役複合体を試験管内で再構成し、負染色による電子顕微鏡解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
基本的な転写伸長因子Spt4/5, Elf1, TFIISを結合した酵母Pol II の転写伸長複合体の構造を世界で初めて解明した。今後真核生物の転写や制御の研究を進める上でマイルストーンとなるような画期的な成果である。さらに、他の因子を結合した複合体やクロマチン転写の複合体の構造解析に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
Pol II転写伸長複合体に結合する他の転写因子について検討を行い、可能なものについてX線結晶構造解析ないしクライオ電子顕微鏡解析に進む。転写休止・終結に関与する転写因子等を含むRNAP複合体についても、引き続き結晶構造解析ないしクライオ電子顕微鏡解析の手法を用いて取り組む。さらに、転写-翻訳共役複合体の再構成・クライオ電顕解析を進める。
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