2018 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子によるRNAポリメラーゼの構造変化と転写制御のメカニズム
Project/Area Number |
15H04344
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
関根 俊一 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (50321774)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | RNAポリメラーゼ / 転写 / 転写因子 / クライオ電子顕微鏡 / X線結晶構造解析 / 転写伸長 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子の転写は、転写開始・伸長・終結からなる複雑なプロセスである。RNAポリメラーゼ (RNAP) は、それ単独では遺伝子の転写を遂行することはできず、多くの転写因子がRNAPと複合体を形成してその機能を補助することで転写は達成される。転写を担うRNAP複合体構造および転写因子等による制御のメカニズムを解明するために、本年度は以下のように研究を進めた。 真核生物の核内でヌクレオソーム構造をとったDNAがどのように転写されるのかを明らかにするために、RNAポリメラーゼII (RNAP II) にヌクレオソームDNAを転写させて得られた反応産物をクライオ電子顕微鏡解析によって解析し、ヌクレオソーム上の4箇所 (SHL-6, -5, -2, -1) で停止している状態のRNAP II-ヌクレオソーム複合体の構造を得た。これらの複合体は、RNAP IIがヌクレオソームDNAを転写する一連のスナップショットを示しており、RNAP IIはヒストンからDNAを徐々に引き剥がしながらヌクレオソーム上を通過していくことが明らかになった。さらに、ヌクレオソーム転写における転写伸長因子の役割を明らかにするために、3種類の転写伸長因子Elf1, Spt4/5, TFIISの存在下で得られた複合体のクライオ電子顕微鏡解析を行なった。その結果、Elf1とSpt4/5はRNAP IIとヌクレオソームの間に割り込み、接触面を作り変えることで、RNAP IIとヌクレオソーム間の相互作用およびヒストンとDNAの相互作用を低減し、スムーズなヌクレオソーム転写を実現していることが明らかになった。 また、細菌では、RNAPによるDNAの転写はリボソームによるmRNAの翻訳と密接に関連している。細菌のRNAPとリボソームが組み合わさって形成される転写-共役複合体を試験管内で再構成し、クライオ電子顕微鏡解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヌクレオソームを転写するRNAP II複合体、さらには転写伸長因子を含むRNAP II-ヌクレオソーム複合体の構造を世界で初めて解明した。今後の転写やクロマチン機能・構造の研究を進める上でマイルストーンとなるような画期的な成果である。さらに、他の因子を結合した複合体等の構造解析に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAPを中心に形成される種々の巨大複合体の調製・再構成を行い、クライオ電子顕微鏡解析を主体とした構造解析を行う。転写休止・終結に関与する転写因子等を含むRNAP複合体についても、引き続き取り組む。さらに、転写-翻訳共役複合体のクライオ電子顕微鏡解析を進める。
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Research Products
(8 results)