2015 Fiscal Year Annual Research Report
New Frontier of Photosynthesis Research by Using the Cryogenic Optical Microscope
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15H04356
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 穣 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20300832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 巧 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (60241246)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単一分子分光 / 光合成 / 励起スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成タンパク質は、多くの色素分子を結合しており、その大部分は吸収した光エネルギーを反応中心クロロフィルに渡すアンテナ色素として働いている。これまで我々は、単一の光合成タンパク質からの蛍光スペクトルを極低温で測定することで、蛍光スペクトルや蛍光強度の揺らぎが観測されることを見出してきた。観測された揺らぎは、光合成タンパク質の構造の揺らぎを反映しているものと考えられ、アンテナ色素が励起エネルギーを反応中心クロロフィルに伝達する経路自体が時間とともに揺らいでいることを示唆する興味深い観測結果である。この成果は、オランダで行われた国際光合成会議で発表した。励起エネルギーの伝達経路の揺らぎは、光合成タンパク質に結合するクロロフィルの励起エネルギーが揺らいでいることによるものと考えられるが、これまでの蛍光スペクトルを測定する実験からは、蛍光を放出するクロロフィル以外の他の大部分のクロロフィルの揺らぎは観測できなかった。蛍光スペクトルに加え、単一分子の励起スペクトルを測定することで、蛍光を出すクロロフィル以外のスペクトル揺らぎの情報を得ようというのが、本研究のねらいである。励起スペクトルを測定するためには、励起光波長をスキャンする必要があるが、本研究では、波長分散した様々な波長を含む励起光を同時にサンプルに入射する方式と、単一波長の励起光をサンプルに入射し波長をスキャンする方式の、二つの方式で単一光合成タンパク質の励起スペクトル測定を実現することを目指す。前者に関しては、モデルとなる蛍光ビーズでの測定を成功させ、2016年11月に日本生物物理学会の年会にて成果発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フォトニック結晶ファイバにフェムト秒レーザーのパルス光を入射して、励起スペクトル測定のための白色光発生系を最適化した。現在までに、発生させた白色光を下記の2種類の光学系に導入して、方式の異なる励起スペクトル測定系を構築している。 1つ目は本研究課題で当初から目指していたものであり、プリズムにより波長分散させたビームを対物レンズの瞳に入射することで、サンプル上で励起光の波長が場所の関数となるような光学配置とし、異なる波長で励起した蛍光を同時に分光器へ集光することで、効率よく励起スペクトルを測定できることを目的としている。この方式に関しては、既にリファレンスとなる蛍光ビーズなどの測定を終え、実際の研究対象となるクラミドモナスの細胞や単離葉緑体を用いた実験を現在精力的に実施している段階である。成果の一部は生物物理学会年会にて報告した。ただし、当初計画していたこの方式の顕微鏡による極低温での動作のためには、クライオスタットを格納する真空チャンバーの製作が必要となるが、本年度までの補助金は材料や部品を調達するのに十分ではなかったため、2017年度以降に持ち越しとなっている。この部分に関して、やや計画より遅れているという自己評価となった。 もう1つの方式として、プリズムとモーター駆動のミラーを用いた光学系を設計し、対物レンズには1つの波長の光のみが入射し、その波長をスキャンできるようにした光学配置も構築している。この光学系の開発については、コンピュータ制御による波長スキャンの自動化の部分を完成させることで、単一光合成タンパク質の励起スペクトル測定が可能となる段階にきた。こちらの光学系は、既存の極低温顕微鏡に導入しているため、コンピュータ制御の点が完成すれば極低温での測定がすぐに実施可能となる段階に来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
極低温での実験を可能とするため、真空チャンバーの製作を開始する。既に設計はほぼ済んでいるため、チャンバー外部からサンプルステージを粗動制御するための直線導入機の選定して、細部の設計を完成させる。比較的大きな材料の加工を必要とするため、本学の金属工作センターと緊密に連絡しながら、真空チャンバー製作を実施する。真空チャンバーの完成までの期間には、これまでの室温での測定結果を論文としてまとめる予定である。真空チャンバー完成後には、当初から目指していた植物細胞から全光合成タンパク質を可溶化して希釈し、単一分子蛍光、励起スペクトル同時測定の実験を始めたい。この測定から、環境変化に応じた色素タンパク質の分布が変化する様子を明らかにできると気体している。 同時に、既存の極低温顕微鏡に波長可変の励起レーザーを導入して、光合成タンパク質光化学系Iの単一分子励起スペクトル分光を開始する。すでに、十分な光量、波長分解能が得られることは実証済みであるため、順調に進めば6月に実験が実施可能であると考えている。同時に、励起光レーザーの光路にλ/2波長板を導入して偏光方向を可変として、単一光化学系Iタンパク質の励起スペクトルの励起偏光方向依存性を測定する実験を実施する。この実験により、光化学系Iのスペクトルを結晶構造を基に理解するのに必要となる情報が得られると期待される。
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Research Products
(12 results)