2015 Fiscal Year Annual Research Report
生物活性ペプチドの分子内架橋による精密立体制御法に関する研究
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15H04494
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
千葉 一裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20227325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 洋平 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80749268)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチド / 化学合成 / 有機電子移動 / 液相合成 / 生物活性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子内ジスルフィド結合の形成ならびに選択的な結合形成法に関する研究を行った。ペプチドの分子内に3組のジスルフィド結合を形成する場合、6つのシステイン残基がそれぞれ選択的にペアリングする必要がある。この場合、ランダムに結合するとその組合せは多数存在するため立体構造が制御された生成物を選択的に得ることは困難である。この問題を解決するためには、予め架橋を形成する相手のみと選択的に反応するよう設計し、各架橋の形成の順番をペプチド主鎖合成後に自由に選択できるようにした。すなわち、システイン残基のチオール基の保護基を選択し、反応条件を逐次厳しくすることによって実現可能であると考えた。一般に、複数の組合せが存在する場合、架橋形成の順番は温和な条件から順次進行するため、一旦主鎖を合成した後に架橋形成の順序を変更することができない。このためペプチド主鎖の構造によっては、自由度の低い立体配座による構造上の障害によって架橋形成反応が完結できないという決定的な問題にしばしば遭遇する。そこでそれぞれ相互に影響しない独立した条件で架橋形成を達成できる新しい反応法を開発が必須となる。これらの反応には、光化学反応法や電解酸化法、電解還元法など、一般化学反応法とは異なる特異性を有するものを含めて研究を行った。光化学反応法は光の透過性の問題から通常ペプチドの固相合成法などに導入することは困難であるが、本研究課題の中核技術である、逆ミセル反応法は、透明な溶液中に数十ナノメートルの微細粒子分散状態が形成され、UV照射反応も実現できるため、生体分子多段階合成に革新的な方法論をもたらすものと期待される。また、メディエーターを用いた電解法も逆ミセル反応法に応用できるため、生体分子の化学修飾を飛躍的に広げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際に生体内で活性を発現する立体構造の解明や医薬品原料としての応用には、これら基本となるペプチド関連物質を精密にデザインした立体構造に変換できる新たな化学合成法の開発が必須である。本研究では、天然物をモデルとして高度に制御された通常の方法では達成困難なペプチドの分子内架橋形成法を導入し、精密に立体構造を固定した有用ペプチド誘導体を高純度、高収率で大量に合成する革新的な方法を確立することを目的とした。これまでに申請者らが開発した逆ミセル連続反応法を用いた極めて効率の良い液相合成反応法を導入し、結合形成の順序を自在に制御する選択的分子内ジスルフィド架橋形成によるトポイソマーの完全選択合成、ペプチド主鎖の環化が困難なペプチド分子にも適用できる分子内環化反応等を新たに導入することによって、立体構造を制御した高度な修飾ペプチドの合成を実現する基本戦略に基づき研究を行い、その実現性の高さを立証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
環形成反応を妨げている鎖状ペプチドの強固な構造(立体配座)を緩める新しい方法を開発する。すなわち、アミノ酸を逐次結合することによって得られる鎖状ペプチドは、アミド結合および分子内水素結合によって主たる立体配座は強固に固定されているものが多いが、この状態で分子内架橋形成や環化反応の実施を試みても、分子の剛直性によって達成できない場合が多い。この問題点を解決するためにペプチド分子の立体構造を分子内環化反応に適合する立体配座変換法を開発し、天然のイモ貝神経毒成分であり、鎮痛薬として期待される天然型、非天然型ペプチドの体系的合成に応用する。 また、ペプチドの剛直な立体配座に由来する、分子内架橋形成の障壁を除くための研究を行う。電解あるいは光照射によって容易に脱保護できることに加え、疎水性タグとしての機能を持った新しいN-アルキルアミド形成法を開発し、多様なペプチド環化を達成する。 さらに、非天然型架橋形成法に応用する、天然型、非天然型ペプチドの体系的合成法を確立する。非天然型架橋を有するペプチドは医薬品としての利用価値が高と期待され、今後はナノスケールで製剤化することにより、これまで注射薬としての投与方法に限られていたペプチド医薬品活性原料を、経皮吸収、経肺吸収などによって投与することができればその応用法が著しく広がることが期待される。 さらにジスルフィド結合を形成する方法と併せ、各組のチオール基がフリーになったものについて、活性カチオン中間体を用いて架橋を形成する方法を新たに開拓する。本法は中性の支持塩を溶解したニトロメタン中で進行するものである。この方法は、酸化還元剤等が不要であり、また、酸化処理される電極表面にペプチドが接触しないため、非常に温和な条件で修飾反応が実現できるという特徴を有する。本研究ではこの新たな方法を用いた架橋形成反応を実現する。
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[Book] Organic Electrochemistry, Fifth Edition2015
Author(s)
Kazuhiro Chiba, Yohei Okada, Kevin Lam, William E. Geiger, Paola Ceroni, Alberto Cerdi, Margherita Venturi, Cyarille Costentin, Marc Robert, Jean-Michel Saveant and others
Total Pages
1716(531-555)
Publisher
CRC Press
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