2015 Fiscal Year Annual Research Report
食品因子による制御性T細胞及びB細胞誘導の分子基盤と免疫・炎症反応制御効果の解析
Project/Area Number |
15H04498
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸塚 護 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70227601)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / 制御性B細胞 / フィトケミカル / 免疫抑制作用 / Foxp3 / インターロイキン10 |
Outline of Annual Research Achievements |
制御性T細胞(Treg)分化を誘導・促進する植物由来食品因子を探索するため、BALB/cマウス脾臓由来CD4+T細胞を、抗CD3ε抗体と抗CD28抗体を用いてT細胞レセプター(TCR)に対する刺激を加えつつ、微量のTGF-βによる弱いTreg誘導条件下で27種類の植物由来食品因子を添加して培養した。その結果、エリオジクチオール、フォルモノネチン、ガランギン、あるいはケンフェロールの存在下で培養したT細胞において、Treg特異的転写因子であるFoxp3を発現する細胞の割合の上昇、Foxp3 mRNA発現量の増加、他のCD4+T細胞に対する抑制活性が認められたことから、これらの食品因子にTreg誘導活性があることが示された。4種のうちエリオジクチオールおよびフォルモノネチンはTGF-β非存在下でも同様のTreg誘導活性を示したのに対し、ガランギンおよびケンフェロールはTGF-β非存在下では誘導活性の減弱が観察された。このことより、Treg誘導活性において、エリオジクチオールおよびフォルモノネチンと、ガランギンおよびケンフェロールではTGF-βの関与が異なる可能性が考えられた。 一方、制御性B細胞(Breg)分化・活性化を促進する食品因子を探索するため、C57BL6Jマウス脾臓からB細胞を調製し、リポ多糖(LPS)刺激によってBregへの分化を誘導する条件下で、15種類のフラボノイドをそれぞれ添加して48時間培養した。上清中のIL-10量をELISA法によって測定し、並行してIL-10高産生細胞の割合をフローサイトメトリーによって解析した。その結果、これまでに見出したケンフェロールおよびタマリキセチンに加え、イソラムネチンおよびミリセチンが強力なIL-10産生増強活性をもつことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
制御性T細胞、制御性B細胞を誘導する植物化学因子の検索を行い、それぞれ複数の活性因子を見出しており、計画は順調に進んでいるものと判断している。今後はこれらの活性因子の作用機構、生体内での抗炎症作用について研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は制御性T細胞(Treg)誘導活性を見出しているナリンゲニンおよびエリオジクチオールについて、その活性発現機構を検討する。すなわち、これらの食品因子とともに培養したT細胞のタンパク質発現の網羅的解析を行い、活性に関与する分子を解析する。抽出したタンパク質を2次元電気泳動に供し、当該食品因子存在下で特異的に誘導されるタンパク質を、酵素分解断片の質量分析により特定する。また、制御性B細胞(Breg)誘導活性を見出したケンフェロール、タマリキセチン、イソラムネチン、ミリセチンについては、他の免疫関連細胞のインターロイキン10(IL-10)産生に与える影響について検討する。すなわち、脾臓から調製した樹状細胞、マウスマクロファージ細胞株J774.1細胞をToll用受容体(TLR)リガンドで刺激した際に誘導されるIL-10産生に対して、培養系に添加した当該食品因子の効果を検討する。また、ナイーブCD4+T細胞を抗CD3抗体、抗CD28抗体で刺激して機能分化を誘導する実験系においてこれらの因子を添加した際の効果も検討する。さらに、これらの食品因子をマウスに経口投与した際の抗炎症効果等についての解析を進める予定である。
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Research Products
(5 results)