2015 Fiscal Year Annual Research Report
高血糖動物であるニワトリにおける生体内アミノ酸糖化に関する栄養生理学的研究
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15H04580
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
喜多 一美 岩手大学, 農学部, 教授 (20221913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西向 めぐみ 岩手大学, 農学部, 准教授 (40374730)
村岡 宏樹 岩手大学, 工学部, 助教 (50546934)
平松 浩二 信州大学, 農学部, 教授 (80238386)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖化反応 / ニワトリ / アマドリ化合物 / 栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸-グルコース-アマドリ化合物の有機合成と血中濃度測定法の確立を目的として、無水メタノール還流系を用いてアミノ酸-グルコース-アマドリ化合物の有機合成を試みた。その結果、アミノ酸-グルコース-アマドリ化合物を大量に有機合成することが可能となった。そこで、上記の化合物を利用し、トリプトファン-アマドリ化合物およびもう一つの糖化トリプトファンである(1R,3S) -1- (D-gluco -1,2,3,4,5 -pentahydroxypentyl) -1,2,3,4-tetrahydro -β- carboline -3-carboxylic acid(PHP-THβC)の血中濃度を測定した。ニワトリにトリプトファンを過剰添加した飼料(1、2または3%過剰)を14または21日間与え、LCMSを用いて2種類の糖化トリプトファンの血中濃度を測定したところ、トリプトファン-アマドリ化合物およびPHP-THβCの血中濃度は、各々約1uMおよび2uMであることを示した。さらに、糖化トリプトファンは血中トリプトファンの約10%程度を占めることを明らかにした。 生体内におけるアミノーアマドリ化合物の分解(代謝)機構を調査するためには、アミノ酸-アマドリ化合物が細胞内に取り込まれるか否か調査する必要がある。そこで、放射性糖化トリプトファンおよび放射性バリン-アマドリ化合物を調製し、ニワトリ胚の筋肉、肝臓、脾臓および腎臓から調製したニワトリ胚由来細胞への取り込みを調査した。その結果、どちらの糖化アミノ酸もニワトリ胚由来細胞へ取り込まれ、筋肉由来の細胞はバリン-アマドリ化合物よりも糖化トリプトファンを多く取り込むことを示すとともに、その取り込みには組織特異性があることを明らかにした。 糖化アミノ酸が小腸からの栄養素吸収に及ぼす影響を調査するために、ニワトリにバリン-アマドリ化合物を経口投与したところ、バリン-アマドリ化合物は消化管から吸収され、血中に移行することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無水メタノール還流系で有機合成することにより、アミノ酸-グルコースアマドリ化合物を大量に有機合成することが可能となった。そこで、ニワトリにトリプトファンを過剰添加した飼料(1、2または3%過剰)を与え、LCMSを用いてトリプトファンーアマドリ化合物およびPHP-THβCの血中濃度を測定した。その結果、各々の血中濃度が約1uMおよび2uMであることを明らかにした。したがって、平成27年度計画に記載した「1.アミノ酸-グルコース-アマドリ化合物の有機合成と血中濃度測定法の確立」は概ね順調に進んでいると判断した。また、血中のトリプトファン濃度と糖化トリプトファン化合物濃度の間には相関関係が認められ、糖化トリプトファン化合物は血清中トリプトファンのおおよそ10%程度を占めることを明らかにした。したがって、平成27年度計画に記載した「2.各種生体内アミノ酸の糖化割合の測定及び糖化アミノ酸栄養価の評価」は概ね順調に進んでいると判断した。 平成28年度に「3.生体内糖化アミノ酸の生成・分解(代謝)機構の調査」を計画していたが、一部を先行実施し、糖化トリプトファンおよび糖化バリンがニワトリ胚由来の各種組織細胞へ取り込まれるか否かを調査した。その結果、糖化トリプトファンおよび糖化バリンのどちらもニワトリ胚の筋肉、肝臓、脾臓および腎臓由来の細胞へ取り込まれることを示し、その取り込みには組織特異性があることを明らかにした。 平成29年度に「5.糖化アミノ酸が小腸からの栄養素吸収及び腸内細菌叢に及ぼす影響の調査」を計画していたが、一部を先行実施し、糖化バリン(フルクトシルバリン)がニワトリの消化管から吸収されるか否かを調査した。その結果、ニワトリに経口投与したフルクトシルバリンは消化管から吸収され、血中に移行することを明らかにした。 以上より、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
無水グルコースとアミノ酸を用いて、無水メタノール還流系で有機合成することにより、アミノ酸-グルコースアマドリ化合物を大量に有機合成することが可能となった。LCMSによるm/zの測定結果から、得られた化合物はアミノ酸-グルコースアマドリ化合物であると推測されるが、構造を確認するためにNMRによる解析を行う予定である。また、塩基性アミノ酸は複数のアミノ基を有するため、得られた塩基アミノ酸由来のアミノ酸-グルコースアマドリ化合物にはキラル体が存在する可能性が示された。したがって、今後、キラル体を分離することを検討する予定である。 アミノ酸-グルコースアマドリ化合物が小腸からの栄養素吸収に及ぼす影響の調査するために、合成したアミノ酸-グルコース-アマドリ化合物と基質となるアミノ酸またはグルコースを同時に経口投与し、投与20分後に腸間膜静脈血中の栄養素濃度(アミノ酸濃度及び血糖値)を測定する予定である。その後、大豆抽出蛋白質、小麦グルテンおよびトウモロコシツェインを蛋白質源とした飼料を用い、不足する必須アミノ酸の代わりに合成したアミノ酸-グルコース-アマドリ化合物を添加し、アミノ酸添加時と同等の成長成績が得られるのか否かを調査する予定である。 アミノ酸-グルコース-アマドリ化合物の生成は非酵素的な反応であり、基質であるアミノ酸の血中濃度がアミノ酸-グルコース-アマドリ化合物の生成量に関与していると考えられる。そこで、生体内におけるアミノ酸-グルコース-アマドリ化合物の生成機構を調査するために、飼料中の単一アミノ酸含量を2%過剰にし、血中アミノ酸濃度を上昇させた上でアミノ酸-グルコース-アマドリ化合物濃度を測定する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Glycated tryptophan in the plasma of chickens fed tryptophan-excess diets2015
Author(s)
Makino, R., Kawashima, Y., Kajita, Y., Namauo, T., Ogawa, S., Muraoka, H., Fujimura, S. and Kita, K.
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Journal Title
Journal of Poultry Science
Volume: 52
Pages: 23-27
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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