2016 Fiscal Year Annual Research Report
高血糖動物であるニワトリにおける生体内アミノ酸糖化に関する栄養生理学的研究
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15H04580
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
喜多 一美 岩手大学, 農学部, 教授 (20221913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西向 めぐみ 岩手大学, 農学部, 准教授 (40374730)
村岡 宏樹 岩手大学, 理工学部, 助教 (50546934)
平松 浩二 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (80238386)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖化反応 / ニワトリ / アマドリ化合物 / 栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度では、第一に、血漿中アミノ酸濃度の変化が、血漿中アマドリ化合物濃度に及ぼす影響を調べるために、飼料中タンパク質源を変化させた飼料をニワトリに給与し、ニワトリの血漿中アルブミンの糖化に及ぼす影響を調査した。飼料タンパク質源として大豆、小麦、トウモロコシから得られたタンパク質を用い、欠乏するアミノ酸を添加した飼料と添加しない飼料を3日間ニワトリに給与した上で、血漿中グルコアルブミン濃度を測定した。その結果、飼料タンパク質源の違いとアミノ酸添加の有無により血漿中アミノ酸濃度が変化した。実験飼料を3日間給与したニワトリにおける血漿中アルブミン濃度は、タンパク質源の違いとアミノ酸添加の有無による影響が認められた。血漿中グリコアルブミン濃度およびアルブミンの糖化割合は、実験飼料を3日間給与した場合、アミノ酸無添加区が添加区より有意に高くなった。以上の結果より、飼料中の必須アミノ酸の不足は、血漿中アルブミン濃度を低下させるが、アルブミンの糖化を上昇させることが明らかとなった。 第二に、バリン-グルコース-アマドリ化合物をニワトリに静脈注射し、投与後0、10、20、30、60、180及び360分後の血漿中アマドリ化合物濃度を測定し、バリン-グルコース-アマドリ化合物の血漿中半減期を測定した。回帰式にはy=a・exp(-λ・x)+bを用いた。なお、xは投与後経過した時間、yは時間xにおける血漿中糖化バリン濃度、aは投与後に増加した血漿中糖化バリン濃度、bは投与前の血漿中糖化バリン濃度、λは消失速度定数を示した。血漿中バリン-グルコース-アマドリ化合物半減期(T1/2)は、次式T1/2=In 2/λから算出した。その結果、回帰式y=8.065exp(-0.0093x)+8.825の式が得られ、バリン-グルコース-アマドリ化合物の血漿中半減期は約75分であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、アミノ酸-グルコース-アマドリ化合物の有機合成と血漿中アミノ酸-グルコース-アマドリ化合物濃度の測定法の確立を目的としており、糖化トリプトファンであるトリプトファン-アマドリ化合物および(1R,3S) -1- (D-gluco -1,2,3,4,5 -pentahydroxypentyl) -1,2,3,4 - tetrahydro -β- carboline -3-carboxylic acid(PHP-THβC)の血漿中濃度の測定を可能とした。また、生体内におけるアミノ酸の糖化割合の測定も目的としおり、ニワトリにおけるトリプトファン-グルコース-アマドリ化合物およびPHP-THβCの血漿中濃度は、各々約 1 uMおよび 2 uMであり、血漿中トリプトファンの糖化割合は約10%であること明らかにした。 平成28年度では、血漿中アミノ酸濃度の変化が、血漿中アマドリ化合物濃度に及ぼす影響を調査することを目的としており、飼料中タンパク質源を変化させることによってニワトリの血漿中アミノ酸濃度を変化させたところ、飼料中必須アミノ酸の不足は、血漿中アルブミンの糖化を上昇させることを明らかにした。また、ニワトリにおけるバリン-グルコース-アマドリ化合物の血漿中半減期の測定も目的としており、バリン-グルコース-アマドリ化合物をニワトリに静脈注射し、投与後0、10、20、30、60、180及び360分後の血漿中アマドリ化合物濃度の変化からバリン-グルコース-アマドリ化合物の血漿中半減期を測定したところ、回帰式y = 8.065 exp (-0.0093 x) + 8.825が得られ、バリン-グルコース-アマドリ化合物の血漿中半減期は約75分であることを明らかにした。 以上より、当初予定していた研究目的は概ね達成されており、研究は概ね順調に進行している考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成29年度では、第一に、生体内糖化アミノ酸の生成機構の調査することを予定している。アミノ酸-グルコース-アマドリ化合物の生成は非酵素的な反応であり、一般的には基質濃度が高いほどアマドリ化合物の生成量は多くなる。しかし、飼料蛋白質含量の減少は、基質となるアルブミンを低下させたにも関わらず、グルコアルブミン比率を上昇させた。この結果は、基質であるアルブミン濃度の変化が、必ずしも生体内におけるグリコアルブミンに連動しないことを示しており、アマドリ化合物の生成を制御する新たな機構が考えられる。そこで、飼料中の単一アミノ酸含量を増量し(2%過剰)、血漿中アミノ酸濃度を上昇させた上で血漿中アミノ酸-グルコース-アマドリ化合物濃度を測定する。 第二に、糖化アミノ酸がタンパク質合成に及ぼす影響を調査することを予定している。生体内で生成された糖化アミノ酸が、筋肉蛋白質合成を阻害するか否か調査するために、ニワトリ胚由来細胞初代培養系に合成した糖化アミノ酸を添加する。さらに3H標識アミノ酸を培養液に添加し、18時間培養後に細胞内蛋白質へ取り込まれた3H放射能から、タンパク質合成を測定する。 第三に、糖化アミノ酸が栄養素(グルコース)吸収に及ぼす影響の調査する予定である。糖化アミノ酸が細胞への栄養素吸収に及ぼす影響を調べるために、ニワトリ胚由来細胞初代培養系に合成した糖化アミノ酸を添加する。さらに3H標識した2-デオキシグルコースを培養液に添加し、18時間培養後に細胞内蛋白質へ取り込まれた3H放射能を測定し、栄養素(グルコース)吸収を測定する。 以上の研究を通して、高血糖動物であるニワトリにおける生体内アミノ酸糖化に関する栄養生理に関する成果をまとめる予定である。
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Research Products
(4 results)