2015 Fiscal Year Annual Research Report
概日時計システムの階層的自己組織化:振動細胞同期と振動体カップリング
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15H04679
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本間 さと 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20142713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎木 亮介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00528341)
小野 大輔 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30634224)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 概日リズム / 時計遺伝子 / 視交叉上核 / イメージング / 結合振動子 |
Outline of Annual Research Achievements |
離乳期に細胞振動が脱同期し自己組織化が崩壊する時計遺伝子CRYの欠損マウスを用い、リズム同期に関わる液性因子を検討した。CRY1/2に加えVIP受容体を欠損するトリプルノックアウトマウスでは新生児SCNにおいても同期が欠損していることを発見し、新生児期の細胞同期にVIPが決定的に関わることを明らかにし、さらに、VIP受容体下流のシグナル伝達の薬理的抑制実験でも同様の結果を得て、VIPの機能を確認した。AVPの役割については、AVP-ELUCノックインマウスのホモ接合体がAVP合成を欠損することを利用し、CRY1/2欠損マウスにおけるAVP遺伝子発現について検討した。その結果、時計遺伝子の分子ループ仮説からは転写亢進が予測されるにも関わらず、遺伝子発現が新生児期においても、成獣においても極めて低下し、サーカディアンリズムもほぼ消失していることが分かった。CRY欠損においては何らかのメカニズムによりAVPの転写が抑制されること、しかしVIPがあれば新生児SCNにおける同期は維持されること、成長に伴いVIPの機能が変化することが明らかとなった。SCNの中枢時計の発達においてはVIPとAVPが時期特異的に重要な鍵を握ることを明らかにすることができた。 また、行動開始と終了を司る2振動体間の局在については、長日と短日の照明条件に同調したマウスの水平断SCN切片を用い、Per1とPer2の発現パターンの経時的発光イメージングを行った。さらに、ドロネー分割を利用して各切片を同一形態に変換することでピクセルレベルでのリズムパラメーターの統計解析を可能とした。その結果、SCNにおいてPer1発現に光周期特異的部位、活動開始制御、活動終了制御の3振動体の局在を明らかにした。一方、Per2発現では、これら変化が極めて小さいことから2遺伝子の機能的差異を明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度より動物施設の管理体制が変わり、施設の職員による飼育管理が始まり、CRY欠損マウスの繁殖率が極端に低下した。6月に入り、繁殖を教室雇用の技術補助員に任せてもらい8月ごろより順調に産仔が得られるようになった。このような技術的な遅延があったにもかかわらず、研究成果は順調に進み、Neuron, Sci.Repをはじめ、一流誌への発表ができた。特に新生児期のCRY非依存性の細胞リズム同期がVIPによることを明らかにした点は重要な発見である(投稿中)。他に、投稿中の論文、投稿直前の論文が複数あり、液性因子による同期メカニズムについては当初の予定を超える成果が得られた。一方、平成28年度の実験のために、VGATノックアウトfloxマウスを用い、アデノ随伴ウィルスによるCreリコンビナーゼ発現によりSCN特異的GABAノックアウトマウスの作成を予定していたが、ウィルスの力価が十分に上昇せず、また、成獣へのウィルス注入に問題があり成功していない。本実験は、来年度のための準備とはいえ、予定したGABAの予備実験が順調に進まなかったため、全体としては、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度における研究で、新生児期におおけるCRY非依存性リズム発振メカニズムが明らかになったことから、成長の過程で、SCNがCRY依存性の時計となるメカニズムについて焦点を合わせ、研究を進める。特に、ペプチド分泌量そのものは成獣SCNの方が圧倒的に多いにも関わらず、CRYを欠損すると同期が消失するメカニズムについて検討を行う。このため、共培養に薬理学的手法を追加し、リズム回復後に個々の機能を抑制することで、細胞同期に関わる因子の同定に務める。さらに、SCNの90%以上の神経がGABAergicであることに注目し、階層的自己組織化におけるGABAの役割について、ノックアウトマウスを用いた検討を行う。ノックアウトマウスについては、コンディショナルノックアウトの作成を試みているが、成獣へのウィルス導入が十分効果を発揮しないため、さらに検討を続けると同時に、並行してGABA分泌を欠損するvGATノックアウトマウス、GABA合成不能のGAD65/67ダブルノックアウトマウスの培養SCNにおいての検討を進める。全身でのGABA欠損マウスは生後直ちに死亡するため、行動リズムの検討は不可能であるが、Creリコンビナーゼにより100%の相同組替えが期待できない以上、完全なノックアウトでの検討は必須であり、胎児SCNを用い、リズム測定を進める。これらのノックアウトマウスはすでに群馬大学柳川教授より入手済みであり、速やかに実験を開始できる。
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Research Products
(19 results)
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[Book] Biological Clocks2015
Author(s)
Honma S, Ono D, Enoki R, Yoshikawa T, Kuroda S and Honma K
Total Pages
253
Publisher
Hokkaido Univ. Press
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