2015 Fiscal Year Annual Research Report
がん検診の有効性を説得力のある形で示せる数理モデルの構築と意識調査に基づく活用
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15H04751
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梯 正之 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (80177344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 裕美 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (90280180)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん検診 / 利益・不利益 / 数理モデル / 意識調査 / 意思決定 / リスクコミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)がん検診の有効性評価のための数理モデルを構築し、(2)住民の意識調査から得られたがん検診の不利益に関するデータを用いて、定量的に不利益を評価する方法を検討したうえで、(3)がん検診の利益と不利益の観点から、がん検診の効果を評価し、わが国のがん罹患率の状況をきちんと反映した形での根拠のあるがん検診システムを提案することである。がん検診の有効性は、その国のがん罹患率によって影響されるので、数理モデルとデータ解析、情報科学的手法を活用して、わが国固有の条件下でがん検診システムのあり方を検討することは、がん検診の有効性を明確に示す上で不可欠の取組みである。
初年度は、次の2点について重点的に取り組んだ:(1)がん検診モデルの理論的な枠組みの構築と、(2)がん検診の不利益の影響を評価する方法の検討である。 (1)については、これまでに作成した検診モデルを発展させ、がんの悪性度とがん転移の有無をモデルの条件に組み込み、検討を進めた。がん検診に関する数理モデル研究の文献レビューを行い、モデルの全体の枠組みや、モデルに組み込むパラメータの推定方法等を検討した。また、がん検診の有効性を判断する上で必要となるわが国のがん罹患率等の既存データを収集し、次年度以降、効率的にシミュレーションが行えるよう研究環境の整備を進めた。 (2)については、平成28年度に住民意識調査によって、がん検診の不利益に関するデータを収集し、心理的影響の分析を予定している。がん検診の不利益に関する文献レビューをもとに調査票の草案を作成し、調査実施への準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり、本研究の目的は、(1)がん検診の有効性評価のための数理モデルを構築し、(2)住民の意識調査から得られたがん検診の不利益に関するデータを用いて、定量的に不利益を評価する方法を検討したうえで、(3)がん検診の利益と不利益の観点から、がん検診の効果を評価することである。
(1)については、検診の有効性を評価する上で重要となるバイアスを考慮し、がんの悪性度とがん転移の有無等の重要な条件を組み入れた基本的構造の検討を進めることができた。しかし、がんの自然史に即した悪性度の分布等の臨床データを入手できていないので、専門家の協力・助言を得て、データを収集できるよう対応していく。 (2)については、平成28年度に実施する意識調査の調査枠組と質問項目の草案を検討することができた。検診の不利益に関する文献は、国内ではほとんどなく、欧米の文献をもとに、わが国に適用できる調査枠組と質問項目を再考したため、予定より時間を要した。当初計画では、次年度の調査に向けて質問項目等を決定する予定であったが、実施に至らなかったため、次年度の前半に調査準備、後半で3,000人規模の意識調査を実施できるよう計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、初年度には、一定の成果を得ることができたので、次年度以降、(1)がん検診の有効性評価のための数理モデルの構築(2)がん検診の不利益に関する意識調査、(3)がん検診の利益と不利益を考慮した評価方法の検討について研究を継続・実施する。 (1):専門家との意見交換、前年度に収集した先行文献や既存データ等の整理・分析をもとに、引き続き、検診モデルの基本的構造、組み込むパラメータの推定方法を検討し、がん自然史に基づく検診モデルの精緻化や推定されるパラメータの安定化を図る。 (2):地域住民3,000人(女性20~69歳)を対象に、仮想評価法を用いて、がん検診の不利益に関する意識調査を実施する。調査は、広島県内の自治体に協力を得て実施する予定である。 (3):がん検診の不利益には、疑陽性による心理的負担や過剰診断等の複数の項目がある。不利益の影響を評価するのは単純ではないが、本研究の最終目標は、がん検診の利益と不利益を整理し、トータルな効果を分析するための数理モデルを提案することである。検診の不利益に関する文献レビューや意識調査の不利益に関する分析結果を用いて、検診の不利益を定量的に評価するための具体的な方法を検討する。初年度に検診の利益と不利益に関する先行研究の情報収集を行ったので、その結果を取りまとめ、論文発表する予定である。
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Research Products
(2 results)