2016 Fiscal Year Annual Research Report
アディポカイン結合蛋白を標的にした動脈硬化診断法の開発
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15H04762
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木原 進士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20332736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 浩靖 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00631201)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 医療・福祉 / 分析科学 / 細胞・組織 / 生体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新規アディポカイン結合蛋白(AKBP)を同定し、アディポネクチンやオメンチンとAKBPとの複合体による動脈硬化発症機序を明らかにすると共に、複合体測定による動脈硬化の診断法と、AKBPをターゲットとした治療法の開発につなげることを目的とする。 2016年度は、抗ヒトアディポネクチンモノクローナル抗体による免疫沈降と質量分析法により、ヒト血清から Mac2 Binding Protein (M2BP)をアディポネクチン結合蛋白として同定した。M2BPは、炎症性疾患や非アルコール性脂肪肝炎などで血中濃度が上昇することが知られている分子であるが、動脈硬化疾患における報告はない。 冠動脈疾患症例において、血清を抗アディポネクチン抗体で免疫沈降し抗M2BP抗体でウエスタンブロットする系を用いてアディポネクチン- M2BP複合体を半定量したところ、年令を合わせた対照の健診受診者に比して著明に高値であり、アディポネクチンやM2BPそれぞれの血中濃度より明らかに大きな差を認めた。従って、複合体の測定系を確立すれば冠動脈疾患の診断に有用となると考えられた。また、アディポネクチンは炎症で血管内皮細胞に発現する単球接着分子を抑制するという抗動脈硬化作用を有するが、M2BPはこの抑制を阻害することが明らかとなった。従って、血中アディポネクチン-M2BP複合体の増加は動脈硬化惹起性であると考えられた。 以上より、アディポネクチン- M2BP複合体の測定は、新たな動脈硬化診断法につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mac2 Binding Proteinを新規AKBPとして同定し、新たな動脈硬化診断法につながるメカニズムを明らかにした。また、新たなAKBPの同定や、測定系の開発が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、ヒト血清や培養細胞から免疫沈降と質量分析法を用いたAKBPの同定を行う。並行してヒトゲノムデータベースを用いて既に同定したAKBPに共通するアミノ酸配列を含むcDNAの検索も行う。動脈硬化との関連が推定される分泌蛋白や受容体や機能が未知の分子を候補とし、候補分子のcDNAを用いて蛋白を発現させ、in vitroの系でアディポネクチンやオメンチンとの特異的な結合が確認されたものをAKBPとし、複合体測定系の開発と臨床意義の解明、動脈硬化モデルにおける機能解析を行う。
アディポネクチン-M2BP複合体測定のELISA系の構築に関して、新たに作製したモノクローナル抗体を用いた検討を行う。まず、高分子アディポネクチン測定ELISAキットで固層化抗体として用いられているANOC9121を用いて、96ウエルプレートに複合体を結合させる。次いで、新たに作製したM2BPに対する十数種類のモノクローナル抗体を反応させ、免疫沈降とウエスタンブロットでの半定量結果との相関性を検討する。ELISA系が構築できれば、大血管症と細小血管症が既に評価されている糖尿病100症例の血清を用いて、アディポネクチン-M2BP複合体を測定し、動脈硬化性疾患のスクリーニングにおける意義を検討する。
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Research Products
(2 results)