2015 Fiscal Year Annual Research Report
急性生体侵襲下における単球系細胞の機能解析と組織傷害関連物質(DAMPs)の制御
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15H05009
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
並木 淳 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20189195)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 急性侵襲 / 臨床 / 単球 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年では生態侵襲を全身の反応ととらえ、病原体からの侵襲をPAMPs(pathogen-associated molecular patterns)、傷害細胞からの放出因子による侵襲をDAMPs (damage-associated molecular patterns)として、包括的な生体メカニズムとして理解し生体侵襲制御に結びつけようとするアプローチがおこなわれている。本研究では、『組織傷害により体循環に放出されたDAMPsが単球を活性化し炎症性サイトカインの産生や組織因子の発現・放出、さらには単球の崩壊による更なるDAMPsの放出を引き起こして病態の急性転化をきたす』との仮説をたて、単球の機能制御が新たな治療ターゲットとなる可能性を明らかにすることを目的として、平成27年度に以下の結果を得た。 Sepsisおよび腹部鈍的外傷患者から末梢血を経時的に採取し、臨床経過と比較検討した。密度勾配法により末梢血単核球を分離し、フローサイトメトリーによりCD14陽性単球、CD14/CD16陽性の活性化単球、HLA-DR陽性の抗原提示細胞の発現プロファイルを解析した。あわせて血漿を分離し、IL-6などの炎症性サイトカインのほか、total Histone H3・H4、HMGB1、mitochondrial DNAなどのDAMPsについて、ELISAもしくは定量rt-PCRにより測定した。 Injury Severity Scoreが高値を示す重症外傷患者では、CD14陽性単球におけるHLA-DRの発現が受傷数日後に著明に低下し、外傷後の易感染性状態(compensatory anti-inflammatory response syndrome)に関連した反応が示された。Sepsis患者の血中DAMPsは、HMGB-1とtotal Histone H3は病状の回復と共に減少したが、total Histone H4とミトコンドリアDNAは病初期から高値のまま推移し、病状の変化との関係は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の当初計画では、血管内皮細胞傷害の修復・再生に関わる血管内皮細胞に与えるDAMPs(damage-associated molecular patterns)の影響について、in vitroの実験を予定した。マウス骨髄細胞由来の培養血管内皮細胞(EC)および血管内皮前駆細胞(EPC)を用いて、培養液中に添加したHistone H3およびHiston H4がECおよびEPCの機能障害と細胞死に与える影響を、Calcein/EthD-III(生細胞/死細胞検出キット)を用いて評価するため、実験条件の検討を行っている。 また、実験動物としてマウスを用いた介入実験を計画し、侵襲モデルとして小腸結紮穿刺による重症sepsisモデル、開腹手術下で肝損傷を加える重症腹部鈍的外傷モデル、蒸気暴露による重症熱傷モデルを予定した。このうち、肝損傷モデルについての検討を進め、定量的な損傷モデルを確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究結果を踏まえ、sepsis患者の臨床検体の採取を追加するともに、軽症患者ならびに正常対象群からの臨床検体を採取し、以下の解析をすすめる。末梢血から密度勾配法により末梢血単核球(PBMC)を分離し、フローサイトメートリーによる細胞プロファイルの1次解析を行う。1次解析と同時にセルソーターによって細胞表面抗原CD14陽性の単球を採取し、ELISAによるリン酸化Histone H3蛋白質の発現解析を行う。同時に採取した末梢血から血漿を分離し、DAMPs(damage-associated molecular patterns)のtotal Histone H3・Histone H4、HMGB1、mitochondrial DNAをELISAもしくは定量PCRで測定し、単球におけるリン酸化Hisitone H3の発現と比較する。 平成27年度にはsepsisおよび重症鈍的外傷患者からの末梢血を採取し、血漿中のDAMPsの測定を行った。この結果をもとに、小腸結紮穿刺による重症sepsisモデルマウス、および重症腹部鈍的外傷の肝損傷モデルマウスを用いた以下の検証を進める。侵襲作成2時間後、1日後、4日後、7日後にそれぞれ動物を深麻酔下にて開胸し、心臓採血により血液を採取する。ヒト臨床検体を用いた実験と同様に血漿を分離して、DAMPsを測定する。単球のフローサイトメトリーによる解析は、同一条件の5~10匹からの血液をpooled sampleとして、PBMCを調製して行う。ヒト検体の実験と同様にCD14陽性単球をセルソーターで採取して、リン酸化Histone H3の発現を解析する。
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Research Products
(2 results)