2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the detection method for animal cysticercosis and the investigation of the genetic factors for host specificity
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15H05261
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柳田 哲矢 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (40431837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
迫 康仁 旭川医科大学, 医学部, 教授 (40312459)
伊藤 亮 旭川医科大学, 医学部, 客員教授 (70054020)
岡本 宗裕 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70177096)
佐藤 宏 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (90211945)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 条虫 / 人獣共通感染症 / 嚢虫症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ウシとブタにおける無鉤条虫・アジア条虫の幼虫感染(のう虫症)の迅速検査法の開発を第1の目的としている。無鉤条虫とアジア条虫はヒトを終宿主とし、それぞれウシとブタを中間宿主とする寄生虫で、世界各地で公衆衛生上の問題となっている。H28年度には、ラオスのセポン郡で調査を行った。流行地の集落で飼育されているブタとウシから採血し、血清検査に供した結果、複数の陽性個体を確認した。これらを購入して解剖し、寄生虫の有無を確認した結果、陽性ウシから条虫の幼虫が確認された。この結果から、本検査法がのう虫症感染ウシの検出に有効である可能性が示された。 本研究のもう一つの目的は、無鉤条虫とアジア条虫の交雑子孫の宿主を明らかにすることである。従来、アジア条虫はブタ、無鉤条虫はウシに寄生するとされていたが、近年、両種の交雑子孫が発見され、その宿主は不明のままである。H28年度には、ラオスで陽性ウシから得られた条虫幼虫を遺伝子解析した結果、ミトコンドリアDNAの塩基配列は無鉤条虫型であったが、核DNAのある遺伝子はアジア条虫型と無鉤条虫型のヘテロ接合体であり、この虫体が両種の交雑子孫であることが明らかになった。感染家畜から交雑子孫を確認したのは本研究が世界初である。このサンプルを材料としてゲノム解析を行い、無鉤条虫およびアジア条虫のゲノム情報と比較した結果、全体としてみれば無鉤条虫に近い領域が多いものの、アジア条虫に近い領域も存在することが明らかになった。ウシとブタそれぞれから得られた複数の交雑子孫を対象として比較ゲノム解析を行うことで、無鉤条虫とアジア条虫の宿主特異生を規定している遺伝子の絞り込みが出来ると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度には、当初予定していたラオスでの調査を実施することができなかったが、代替策として、インドネシアとタイでブタの調査を実施した。H28年度には、中国とラオスでの調査を予定していたが、政治的な理由により、中国での調査が中止となった。H27年度はブタのみの調査であったが、H28年度のラオスではブタとウシの両方を対象とした調査を行うことができた。その結果、現在開発中の血清検査法は、種特異的な検査法とは言えないものの、ブタとウシの両方でのう虫症感染個体を検出できる可能性が示された。また、家畜から初めて、無鉤条虫とアジア条虫の交雑子孫を検出することができた。 本研究では、無鉤条虫とアジア条虫の交雑子孫の宿主を明らかにするとともに、比較ゲノム解析によって無鉤条虫とアジア条虫の宿主特異性を決めている遺伝子の探索を行うことも目的としている。H27年度はサンプルが集まらずゲノム解析を行うことができなかったが、H28年度には無鉤条虫、アジア条虫ならびにラオスのウシから得た交雑子孫を材料としてゲノム解析を行った。これらのゲノム情報を比較した結果、ウシから得られた交雑子孫のゲノムは、全体としてみれば無鉤条虫に近い領域が多いものの、アジア条虫に近い領域も存在することが明らかになった。宿主特異性を規定する遺伝子を絞り込むには、ブタからも交雑子孫を採集し、解析する必要がある。 以上のことから、現在までのところ概ね順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度も、引き続きラオスでの調査を行う。H28年にラオス国立大学農学部の獣医系研究者との共同研究体制が整い、流行地でウシとブタの調査を効率的に行うことが出来るようになった。調査地において既にウシから交雑子孫が見つかっており、調査を継続することで、血清検査法の有用性の検証と、交雑子孫の宿主の解明、および無鉤条虫とアジア条虫の宿主特異性規定因子の探索が可能と考えられる。 開発中の血清検査法については、他の条虫との間に交差反応が起きうる可能性が示されている。そのため、次年度は現在用いている抗原に加え、新たに無鉤条虫幼虫から精製した抗原を用いた血清検査法についても検討する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Swine cysticercosis in the Karangasem district of Bali, Indonesia: An evaluation of serological screening methods2016
Author(s)
Swastika K, Dharmawan NS, Suardita IK, Kepeng IN, Wandra T, Sako Y, Okamoto M, Yanagida T, Sasaki M, Giraudoux P, Nakao M, Yoshida T, Diarthini LPE, Sudarmaja IM, Purba IE, Budke CM, Ito A
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Journal Title
Acta Tropica
Volume: 163
Pages: 46-53
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research