2015 Fiscal Year Annual Research Report
感染症ゲノム遺伝子型迅速診断法の開発と臨床検体での評価
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15H05272
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山岸 潤也 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 准教授 (80535328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 穣 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デングウイルス / マラリア / ゲノム / MinION / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
各種感染症も対する最適な治療方針の提供や病原体拡散のモニタリングにおいて、遺伝子型の判別は重要であり、それを可能とする迅速な検査方法の確立が望まれている。我々は、小型迅速、使い捨てを特徴とする次世代シーケンサーであるMinIONの評価を進めている。また、デング熱、チクングニア熱、マラリア等、熱帯感染症の流行地であるインドネシア共和国マナド市のサムラトランギ大学医学部と研究協力関係を維持している。そこで本計画においては、LAMP法とナノポアの組み合わせによる迅速遺伝子型判別系の現地実証試験を、マナド市で取得した臨床検体で行うことを主題とする。 初年度にあたる平成27年度は、マナド市においてデングウイルス感染と診断された患者の血清の収集を行いRT-LAMP法により増幅した後、MinIONに供試し、遺伝子型の判別を行うことを企図した。 5月、8月、10月の3回にわたりマナド市へ渡航し、デング患者の血清の取得と、MinIONによる解析を行った。まず、インドネシアでもMinIONが機能することを確認した。次に、血清を鋳型にLAMPを行い増幅産物を得た。そこで、これを用いてライブラリーを作成、MinIONで配列解析を行い、デングウイルスの血清型を決定したが、スタンダードとされるRT-PCR法と比較して、必ずしも一致しないことが問題となった。取得配列を吟味した結果、プライマーダイマーが認められることも多く、既報のLAMPプライマーセットの改良が課題としてあがった。 一方、multiplex解析の可能性を検証するために、マナド市で収集した熱帯熱マラリア患者抹消血から抽出したDNAを鋳型にK13-propeller遺伝子の増幅を行った。増幅に際して、プライマーに8塩基のindexを付与し、それに基づいて、最大8multiplexの同時解析が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の様に、途上国におけるMinIONの稼働試験、および、Multiplexの実証は達成した。後者については、マラリア原虫のアルテミシニン耐性に関与するとされるK13-propellerを対象とし、イントロンを含まない2.5 kbの遺伝子を前半部と後半部に分割して増幅するプライマーをデザインし増幅をおこなった。マラリア原虫を対象とした解析はH28年度に予定していたが、その一部を本年度に前倒ししたことになる。また、この1年でMinIONの出力する配列の精度が70%から90%以上に向上したことから、想定されていたコンセンサス配列取得に関する問題も払しょくされた。具体的には、低速ではあるが正確なSmith-Watermanアルゴリズムに代わるアライメントツールの利用・開発・最適化を想定したが、LASTを用いることで、十分な精度でSNPのコールが可能であることを確認した。一方、デングウイルスLAMPについては、スタンダードとされるRT-PCR法と比較して、必ずしも一致しないことが明らかとなり、プライマーの改良を含む遺伝子増幅系の最適化が課題として見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、チクングニアウイルスおよび、マラリアを解析対象に加える。マラリアについては、上記のアルテミシニン耐性に関与するとされるK13-propellerを対象とし、50検体を目途に配列の取得と、耐性の推定を行う。インドネシアにおいては未だ当該耐性株の分離は報告されていないが、タイ、ミャンマー国境付近における出現と拡散が報告・懸念されており、インドネシアにおける定期的なモニタリングは、現地の公衆衛生にも直接寄与するものと考えている。検体の処理およびMinIONを用いた配列解析は、現地マナド市での実施を想定しており、そのため、年3回を目途に渡航を予定している。デングウイルスについては、LAMPプライマーの最適化を図る。 加えてH28年度は、LAMP試薬の乾燥化を行い、そのフィールドでの実証を図る。本系は、LAMP試薬を凍結乾燥させることで得られ、結核菌の検出等で既に実績がある。フィールド実験においては、頻発する停電(と、それによる冷蔵庫・冷凍庫の機能停止)、試薬輸送時の温度変化による失活等、試薬の質の維持に大きなエフォートを割く必要があり、日本国内で機能していた系がフィールドでは動かないこと散見される。本提案においても、いかに試薬の質を維持するかは大きな懸念事項であるが、常温で長期間安定なDry-LAMP系の確立は、この点において大きく貢献するものと期待している。
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