2016 Fiscal Year Annual Research Report
マルチプレックス法と流行地住民コホートを用いたマラリア・ワクチン候補抗原の発掘
Project/Area Number |
15H05282
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
藤井 仁人 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (10404237)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 聰 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (00342907)
後藤 健介 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 准教授 (60423620)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | マラリアワクチン / マルチプレックス法 / コホート |
Outline of Annual Research Achievements |
ケニア共和国のBusia県にあるケニア中央医学研究所にナイロビからケニア人スタッフ1名が赴任し、研究所スタッフの協力を得ながら調査を担当した。同地にあるAlupe小学校において、生徒全員を対象としたマラリア発症の追跡調査を11月まで行った。調査期間中、体調不良の生徒は同研究所病院に来院し、マラリアの検査と治療を行なった。また、不顕性感染者の検出を行うため、7月と9月の2回、学校において生徒全員について採血を行い、マラリアの検出を行なった。 現在データの整理を行っている段階であり、詳細な疫学的な解析はこれから行うが、この追跡調査により、マラリアを発症した感受性グループ、学校での全員採血によりマラリアが検出されながら発症していない不顕性感染グループ、発症せず、かつ学校での検査でマラリアが検出されなかった非感染グループ、に分ける事ができた。 多くの不顕性感染者が見出された事から、Busia地区はマラリア感染が常在する高度な流行地であり、住民は繰り返しマラリアに暴露される事により、感染しても発症しない「部分的な免疫」を獲得していると考えらる。この事は同時に、マラリアに感染しない「完全な免疫」の獲得が困難である事を示唆している。とすれば、ワクチン開発の目標は、「部分的な免疫」を獲得するためのものであるべきであろう。 本調査では、検査のための採血時に、ろ紙上にも全血を採取して保存しているので、ろ紙から抗体を溶出する事でワクチン候補抗原の評価に用いる事ができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半年間の追跡調査により、マラリア発症の追跡調査と、学校での全員採血2回を行う事ができた。ケニアの小学校は1月から始まり、年度をまたぐと卒業と新入学が起き、データが不完全になる。またあまりに長期の調査では、中途からの免疫獲得の影響が大きくなると予想されるので、半年間で追跡調査は打ち切った。最終年度に、抗原の精製と評価を行う事ができるので、研究期間中に目的を達成できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
候補抗原の発現精製を行い、マルチプレックス法により、各グループ毎の抗体価を求める事で、ワクチン候補としての評価を行う。不顕性感染グループで高く、感受性グループで低い抗体価を示す抗原が魅力的なワクチン抗原となる。検査抗原としての評価も同時に可能であるから行う。 マラリアlysateに対する免疫沈降法と質量分析(LC/MS/MS)法を組み合わせる事で、新規なワクチン抗原候補の探索も計画している。日本国内で行いたい内容であるが、ケニア共和国からのヒト検体(抗体を含む)の持ち出しが難しくなっている。そのため、免疫沈降法まで現地で行い、得られたマラリア抗原を日本に持ち帰って質量分析による同定を行う予定である。(マラリア抗原はヒト検体では無いため、おそらく可能。)
|