2015 Fiscal Year Annual Research Report
短周期生物時計の応答計測と再構築による制御機構の解明
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15H05326
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯村 彰宏 京都大学, ウイルス研究所, その他 (70512466)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非線形動力学 / 光遺伝学 / 合成生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
Hes1短周期リズムに様々な遺伝子・周期・強度の光摂動を与え、動的応答特性を定量計測した。まず、Notch シグナルの不活性化因子の Hes1を周期的に光誘導すると同時に、短周期リズムのダイナミクスを Hes1転写活性の生物発光レポーターによって1細胞レベルで可視化できる細胞株(筋芽細胞株C2C12を使用)を樹立し、動的応答を定量計測した。その結果、内在性短周期リズムを外部刺激の周期に引きこみ同調させることに成功した。さらに、1細胞の転写活性の位相分布を解析し、その集団同期の度合いをエントロピーに基づいた統計量によって定量した。その結果、2.75時間と 5.5時間周期の光摂動条件でピークが見られ、非線形振動子に特徴的な引き込み同調が起こっていることがわかった。更に、動的応答を定量的に説明する位相応答関数の測定に成功した。測定された応答関数を元に確率的位相振動子モデルの発展方程式を数値シミュレーションしたところ、引き込み同調過程がよく再現された。以上の結果から、Hes1の転写活性ダイナミクスは1細胞レベルで周期を維持しつつ外部刺激に同調も可能な非線形振動であり、そのダイナミクスが確率的位相振動子モデルでよく説明できることが明らかとなった。本研究は、遺伝子発現リズムがリミットサイクル振動であることを1細胞レベルで直接明らかにした初の実験的検証であると考えられる。現在、本研究内容を論文投稿するため、準備中である。また、人工的な短周期リズムを再構成するため、遺伝子回路のパーツ選定作業を開始し、数種の有望なパーツを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然のHes1短周期リズムに関して、光遺伝学と発光イメージングと組み合わせることによって動的応答特性を計測できる系が確立できた。また、人工的な短周期リズムを再構成する上で有用であると期待される遺伝子回路パーツを複数選定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、人工的な短周期リズムを再構成するため、有用であると期待される遺伝子回路パーツを組み合わせることによって負の時間遅れフィードバック回路を構成し、遺伝子発現のパルス発振を発光顕微鏡下で確認することを目標とする。また、選定されたパーツでうまく動かない場合に備えて、更なる別の有用な遺伝子パーツの選定を継続する予定である。
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Research Products
(2 results)