2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05473
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 良一 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (90700170)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | グラフェン / 多孔質 / ディラックコーン / 周期構造 / 電子状態密度 / 比熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンは炭素原子1個分の厚みを持つ理想的な2次元シートである。応用研究・商品化を視野に入れると必ずしもグラフェンが2次元シートである必要性はない。本研究の目的は、2次元シートであるグラフェンに3次元構造を持たせることで、グラフェンを用いた応用研究・商品化への基礎研究を大きく加速させると共に炭素材料の新たな可能性を探索し実証することである。 3次元構造を持つグラフェンの中で特に重要なのが周期的極小曲面を持つグラフェンである。グラフェンに関して言えば、周期性が整っていることで特異な物性(超伝導や高効率な太陽電池)が現れることが理論的に予測されている。2次元構造しか持たないグラフェンに対して周期的極小曲面を持つグラフェンを作成することは非常に困難とされていたが、最近の申請者の研究によって初めて作成された(Y. Ito et al, Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 4822. (Hot Paper))。しかし、周期的極小曲面を持つグラフェンがどのような物性を持っているかは明らかではなかった。 そこで、周期的極小曲面を持つグラフェンの特異な物性を理解するために、初年度は独自に開発したグラフェン成長法を用いて周期的極小曲面の系サイズを2つのアプローチで作り分けた。一つ目はすでに用意されている多孔質基盤にグラフェンを蒸着させるトップダウン法であり、二つ目はナノ構造体を用いることでその場で多孔質基盤を作成しながらグラフェンを蒸着させるボトムアップ法である。これらの2つの手法を用いることで異なる曲率半径を持ったナノ多孔質グラフェンの制御法の確立に成功した。本研究で開発した手法は世界で初めて多孔質グラフェンの制御に成功した成果であり、多孔質グラフェンのみに適応できるものではなく、様々なナノ多孔質材料にも適応できる重要な材料開発法になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なる周期サイズを持つ周期的極小曲面を持つナノ多孔質グラフェンの制御法を確立し、次年度以降、この制御法を用いて異なる周期サイズを持つナノ多孔質グラフェンを作成して様々な測定を行える状態になったからである。また、本成果は、平成28年第10回 PCCP Prize、および、公益財団法人トーキン科学技術振興財団からの第25回トーキン科学技術賞の受賞対象の一部となったからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、初年度に確立した制御法を用いて曲率半径を制御したナノ多孔質グラフェンの作成を行う。具体的には、孔半径が50nm、200 nmと500 nmの多孔質グラフェンを作成する予定である。これらの異なる曲率半径を持ったナノ多孔質グラフェン試料を用いて曲率依存した特異な電子状態密度の変化の解明を目指す。電子状態密度の測定は光電子分光法を用いて測定を行い、曲率半径ごとに分類した測定結果を比較・検討することで、フェルミレベル近傍での電子状態密度が曲率の違いによりどのような影響を受けているかを調べる予定である。次に、それらの曲率半径が異なる試料を用いて電気伝導特性測定を行う。具体的には、温度領域2 Kから300 Kの温度領域において±7 Tの高磁場を印加することで特異なフェルミレベルを持つナノ多孔質グラフェンの伝導特性の解析を行う予定である。本年度は異なる曲率半径を持つグラフェンに対して上記の二通りの測定を行うことで、周期構造を持つナノ多孔質グラフェンの基礎的な物性の理解を目指す。
|
Research Products
(5 results)