2015 Fiscal Year Annual Research Report
建設的な「諦める」を促進する臨床心理学的支援プログラムの開発
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15H06125
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅沼 慎一郎 東京大学, 教育学研究科(研究院), 特任助教 (60756451)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 臨床心理学 / 諦める / 諦観 / プログラム開発 / アプリケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
「建設的な「諦める」を促進する臨床心理学的支援プログラムの開発」という本研究の目的に基づき、以下の研究を行った。 1過去の諦め体験に対する意味づけを測定する尺度の標準化およびセルフチェック・ツールの開発:菅沼(未公刊、博士論文)で作成された特定の諦め体験に対する意味づけ尺度に関して、20代~60代の幅広い発達段階の人々にインターネット上で質問紙調査を行った。確認的因子分析や信頼性分析、相関分析の結果、本尺度が高い信頼性・妥当性を有していることを明らかにした。それらの結果に基づき、過去の諦め体験に対する意味づけに関する自身の傾向について簡便に把握できるよう、下位尺度得点による分類とフィードバックを考案した。 2 諦めること一般への認知と過去の諦め体験に対する意味づけに働きかけるセルフワーク開発:多様な諦め体験を収集し、分類するため心理学の知見がある協力者に協力してもらい、KJ法とテキストマイニングを用いて既存の自由記述データから「諦める」の分類を行った。その結果を基に、菅沼(2015)で考案したワークを発展させ、性別と発達段階に応じたストーリーを体験する新しい形のワークを考案した。これは過去・現在・未来といった時間軸の中に諦めることを位置づけ、その時々における人生の選択を擬似的に体験することで、フィードバックと共に諦めることについて体験的に学ぶものとなっている。 3 臨床心理学的支援プログラムの考案:上記のセルフチェックとワークを統合し、諦めることに関してより俯瞰的な見方ができるような仕組みを考案、全体をプログラムとして構築した。同時に、セルフヘルプ・プログラムであることを考慮し、既存のwebアプリケーションの効果の分析を行いつつ、利用者のモチベーションを高める仕組みや説明の流れ、デザイン、データベース構造について、実装の実務者と打ち合わせを重ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画をほぼそのまま踏襲する形で実施しており、実績は着実に積み重なっている。成果報告についても、研究を進めていく中で実施した分析を学会発表の形で発表し、他研究者との交流を基に発展させ、最終的に論文の形でまとめる予定である。既に関連する諸学会での報告が確定しており、それぞれについて簡単な概略を示す。
1. 過去の諦めた体験に関する意味づけに関連して、未練が残った群の諦めた理由について質的な分析を加えて分類したもの(日本発達心理学会第27回大会(2016)において発表予定(採択済)) 2. 諦めることに着目した簡易的なwebアプリケーションの効果として、諦めること一般に対する認知のうち、有意味性認知の向上、挫折認知の低下があることをアプリ使用データにより示したもの(第31回国際心理学会議(ICP2016)において発表予定(採択済)) 3 諦めることに着目した簡易的なwebアプリケーションの効果として、諦めること一般への認知についてアプリ使用前後の質的な変化を検討したもの(第31回国際心理学会議(ICP2016)において発表予定(採択済))
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Strategy for Future Research Activity |
「建設的な「諦める」を促進する臨床心理学的支援プログラムの開発」という本研究の目的に基づき、平成27年度に引き続き研究を行う。 1 web アプリケーションの改修と発展:平成27年度に作成したプログラムのwebアプリケーション化を行う。その際、申請者が開発してきた簡易的な web アプリケーションを改修・発展させることで、これまでの利用者にも使用可能な形とする。実装および改修は外部の開発会社に委託を行う。 2 プログラムの実施と効果検討:1において開発したweb アプリケーションを臨床心理学的なプログラムとして web 上で実施し、その効果を検討する。webアプリケーション内に組み込んだセルフチェックおよび精神的健康を測 定する尺度をプログラム実施前後に行い、得られたデータを統計的に分析することで心理援助プログラムとしての効果の検討を行う。その際にはプログラム実施群(web アプリケーション利用群) と統制群(webアプリケーション非利用群)を設けることで本プログラムによる心理援助の効果に ついてより厳密な検討を行うこととする。また、セルフチェックにおける分類およびフィードバックの妥当性についてもアンケートにより検討する。対象は健常群とする。その後分析を行い、 可能であれば臨床群を対象とした調査を行う。
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Research Products
(3 results)