2015 Fiscal Year Annual Research Report
多座配位Fischer型カルベン錯体触媒によるアンチマルコフニコフ型付加反応開発
Project/Area Number |
15H06202
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 講平 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (00756108)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | Fischer型カルベン / 有機金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
検討の結果、イリジウムを中心金属とした場合に目的である多座配位固定型のFischer型カルベン錯体の合成を達成することができた。これは世界初の例である。合成手法の確立もでき、市販試薬から複数の段階を経て比較的収率よく合成することができるようになった。また、タングステンを中心金属とした錯体の合成も検討し、あと1段階で目的錯体を得られる状況である。その他、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金といった各種遷移金属に関しても多座配位固定型のFischer型カルベン錯体の合成を現在検討中である。 得られたイリジウム錯体に関して、反応性の探索を行った、イリジウム上に塩素が配位した錯体は比較的反応性に乏しいが、メチルグリニャール試薬との反応ではメチルイリジウム錯体を量論的に生じる。新たに得られたこの錯体は種々のガス分子と反応することがわかっており、水素、エチレン、二酸化炭素、エチレン/二酸化炭素混合ガスの雰囲気下、それぞれ何らかの新しい錯体を形成した。これらの構造は現在解析中である。 また、イリジウム上の塩素を銀塩によって解離させることでカチオン性の錯体が生じる。こちらの錯体に関しても各種試剤との反応性を探索したところ、水存在下でなんらかの新しい錯体を生じるた。これは題目に掲げていた水和反応を進行させる活性種である可能性があると考え、今後重点的に構造解明に取り組む予定である。 以上のように昨年度は研究計画で挙げていた多座配位固定型Fisher型カルベン錯体の合成手法の確立および反応性の探索は概ね達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、多座配位固定型Fischer型カルベン錯体の合成が達成できた。さらに、その反応性の探索にも着手できたため、概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の検討の結果、目的錯体の一つであるイリジウムを中心金属とした三座配位型Fischer型カルベン錯体を合成することができた。今後はこの錯体の反応性を調べるとともに触媒的アンチマルコフニコフ型付加反応の実現を目指す。すなわち、当該錯体と様々なH-X型の基質の反応を検討することで目的に挙げたようなイリジウムとカルベン炭素が協働的にH-Xを切断するような反応が進行するかを確かめる。期待している中間体が生じたら続いて各種アルケンとの反応を検討しアンチマルコフニコフ型付加反応が進行するような組み合わせを模索する。また、これらの知見に基づき、触媒量の錯体と基質とを反応させることで触媒的な付加反応の実現を目指す。さらに類似の主構造であって置換基が異なる錯体を合成して同様の検討を行い、その影響について調査する。金属中心についてもイリジウム以外の金属をもつ錯体の合成を検討する。これらを用いて目的であるアルケンへのアンチマルコフニコフ型の付加反応を目指す。
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