2015 Fiscal Year Annual Research Report
契約法における任意法規論の現代的展開とその解釈論的応用
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15H06546
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
松田 貴文 京都府立大学, 公共政策学部, 講師 (00761488)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 任意法規 / デフォルト・ルール / 私的自治 / 契約正義 / 社会的厚生 / 典型契約論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、契約法の特徴である任意法規性に着目し、契約法の正当化根拠に遡って解釈基準を定立し、基礎理論を契約法の具体的解釈論へと接合することによって、契約法解釈論における議論の明晰な言語化を可能にすることを目的とする。この最終目的達成の準備作業として、本年度は、以下の成果を得た。 1.わが国の契約法理論に対して決定的に重要な影響を与えてきた伝統的ドイツ法学においては、どのような任意法規理論が前提とされてきたかを明らかにした。そこでは、当事者の自律を究極的な正当化根拠とする立場から任意法規理論を構築する立場と、契約正義ないし客観秩序を究極的な正当化根拠とする立場から任意法規理論を構築する立場が存在していた。 2.上記両理論は、近時のドイツにおける議論においては、比較的明示的な形で議論されてきていることが分かった。こうした、従来の議論を明示的に言語化するという作業が行われている重要な原因のひとつとして、これまでとは異なる正当化根拠に基づく任意法規理論が、英米法の特に法の経済分析によるデフォルト・ルール論がドイツにおいても台頭してきていることがあることが分かった。 3.そして、現代ドイツ契約法学においては、この法の経済分析によるデフォルト・ルール論が重大な影響を及ぼすに至っている。従来の伝統的価値との対峙の中で、任意法規理論のみならず契約法学全体において大きな議論を巻き起こしており、特に、任意法規及び強行法規のそれぞれの意義や限界についての議論があり、相互に影響関係にあることが分かった。 4.特に、私的自治との関係が問題となるものの実践的問題として理論構築が求められる消費者保護規制に関しては、行動経済学の視点が極めて有用であることが分かった。この視点から私的自治を改めて再解釈するという作業が行われており、今後わが国においても影響力を持つものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、伝統的ドイツ法学における任意法規理論の学説的整理と、現代ドイツ法学において英米のデフォルト・ルール論がいかように受容されているのかという点に関して、文献収集と整理を行った。また、わが国において、任意法規という観点からどのような議論がなされてきたかをまとめる作業を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の進捗状況に鑑みると、今後の研究方針について大きな変更は必要ないものと考える。次年度は、現代ドイツ法学の議論の整理を引き続き行い、英米のデフォルト・ルール論との関係を整理する。その上で、わが国の契約法解釈論において得られる示唆を提示したい。そのために、数学、経済学の基礎的知識を習得するとともに、現代正義論、特に功利主義の検討も並行して進めたい。また、任意法規論の具体的解釈論への接合を試みる米独の文献を収集し、まとめる作業を行う。
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