2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヘルバルト教育学における近代性の再検討―「完全性」概念を手がかりに―
Project/Area Number |
15H06759
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
小山 裕樹 摂南大学, 外国語学部, 講師 (60755445)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 教育学 / 教育哲学 / 教育思想史 / 完全性 / ヘルバルト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一般に「近代教育学」の定礎者と見られる向きのある19世紀ドイツの哲学者・心理学者・教育学者であるヘルバルト(Johann Friedrich Herbart 1776-1841)の思想を直接の検討対象としながら、とりわけ彼の「完全性(Vollkommenheit)」という概念に着目しつつ、いわゆる「近代教育学」が有する多面的性格を明らかにしようとするものである。2015年度は、2年計画の前半部として、主に資料の収集・整理・調査等の基礎的作業に従事した。その研究成果は、以下の通りである。①ヘルバルトに多大なる思想的影響を及ぼしたイマヌエル・カントの反省的判断力論を再検討することを通して、優れて「近代的」概念であるとも言える「自律」概念の問い直しを試みた学術論文の執筆(下司晶編『「甘え」と「自律」の教育学』世織書房、所収)。②ヘルバルトの教員養成論に立ち返ることで教員養成における理論‐実践問題を再検討しつつ、「完全性」概念と「経済的合理性」との間の矛盾にも論及した学術論文の執筆(下司晶・須川公央・関根宏朗編『教員養成を問いなおす』東洋館出版社、所収)。③近年の研究動向を踏まえつつヘルバルト教育学の概要を平易にかつ手際よくまとめた教科書の一節の執筆(眞壁宏幹編『西洋教育思想史』慶應義塾大学出版会、所収)。④「教育思想史の「裏面」を問う」という共同の研究課題に対し、ヘルバルトの「完全性」概念に着目しながら、これまで十分に論じられてこなかった彼の教育思想の「裏面」を問うことを試みた学会発表(教育思想史学会第25回大会コロキウム発表)。以上、2015年度の研究成果は、学術書への論文投稿が2件、教科書の一節の執筆が1件、学会での共同発表が1件であった。以上の成果を踏まえて、次年度はさらに研鑽を積みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調である。2015年度の研究成果は、学術書への論文投稿が2件(下司晶編『「甘え」と「自律」の教育学』世織書房、下司晶・須川公央・関根宏朗編『教員養成を問いなおす』東洋館出版社)、教科書の一節の執筆が1件(眞壁宏幹編『西洋教育思想史』慶應義塾大学出版会)、学会での共同発表が1件(教育思想史学会第25回大会コロキウム発表)であった。以上の成果を踏まえて、次年度はさらに研鑽を積みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、ヘルバルトの「完全性」概念にとりわけ着目しながら、ヘルバルトの教育思想における「近代性」の問題を様々な角度から検討してきたが、今後もこの方向性を維持しつつ、加えて彼の教育思想の前史や影響史、またその心理学的射程をも視野に入れながら、さらに検討を進めていきたい。
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Research Products
(4 results)