2015 Fiscal Year Annual Research Report
口腔細菌が引き起こす糖尿病性腎症の発症機序とその予防に関するスタートアップ研究
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15H06802
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
高田 俊輔 福岡歯科大学, 歯学部, 医員 (10757826)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | Porphyromonas gingivalis / toll-like receptor / 糖尿病 / 糸球体硬化 / 終末糖化産物 / 1型コラーゲン / ストレプトゾトシン / 1型糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはこれまでに、糖尿病患者の腎糸球体が自然免疫受容体であるtoll-like receptor(TLR)2と4を発現することを見出しました。糖尿病患者で発生している終末糖化産物(AGE)は、免疫細胞や血管内皮細胞にAGE受容体で認識され炎症反応を起こします。私たちは、AGEは糸球体に蓄積することで、TLRの発現が起こると考えました。糖尿病患者が歯周病を合併すると、口腔で体循環に入った病原因子は腎に入り、糸球体にTLRで認識され、炎症とその修復反応が引き起こされた結果、腎組織に糸球体硬化による糖尿病性腎症が発症すると考えました。本研究の初年度では、糖尿病マウス腎糸球体におけるTLRの発現と歯周病原菌由来TLRリガンドによる糖尿病マウスの腎症の発症を検討ました。ICRマウスにストレプトゾトシンを投与した1型糖尿病マウスに歯周病原菌Porphyromonas gingivalis由来LPSを投与するとTLR2/4の発現が見られ、対照マウス全数生存期間に全数死亡し、その尿タンパク・尿糖は高値で、腎糸球体では1型コラーゲンの増生と顕著な基質増生が観察されました。歯周病原菌LPSが糖尿病マウスの生存期間を縮小し糸球体硬化に特徴的な基質の増生の発現が見られたことから、Porphyromonas gingivalis由来LPSがTLRを介して糸球体内皮を活性化させたため、糸球体血管に隣接するメサンギウムも活性化し、1型コラーゲンの増生による糸球体硬化を発症させたのではないかと考えています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画通りに進行しています。TLRリガンドによる糖尿病性腎症の誘発に関する糖尿病モデルマウスを応用した解析では、血中に入ったPorphyromonas gingivalis TLRリガンドは1型コラーゲン産生を促進させることを明らかにしました。また、終末糖化産物AGEの一種であるCMLを腹腔に投与したマウス生存率が低下することを見出しました。詳細は、Porphyromonas gingivalis TLRリガンド投与糖尿病マウスの尿・血清のタンパク、糖、血中クレアチニンと尿素窒素の値はTLRリガンドを非投与糖尿病マウスより有意に高く、Porphyromonas gingivalis LPSで腎症を発症した糖尿病マウスは組織修復で重要な抗炎症性サイトカインTGF-βの産生と、その糸球体周囲のメサンギウムにおけるコラーゲンの増生が起こっていることを、免疫染色によるレーザー顕微鏡分析、ならびに染色領域のスキャンとImageJによる面積定量で証明しました。以上のことから、Porphyromonas gingivalis TLRリガンドTLRリガンドは糖尿病性腎症の発症を発症させる可能性が強く示唆され、当初研究計画通りに進行していると評価しました。
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Strategy for Future Research Activity |
歯周疾患を有する糖尿病患者の腎症合併率を疫学的に解析するため、アンケート調査の依頼を開始します。慢性辺縁性歯周炎を有する糖尿病患者は腎症を合併する危険性が有意に高いことが報告されており、本学医科歯科総合病院と全国の透析センターとの連携により、初めに後ろ向きコホート調査にて、糖尿病患者の歯周疾患の程度と腎症合併率を非浸襲性に調べ、多重変量解析・ロジスティック解析を行います。また、口腔微生物成分誘導性の糖尿病性腎症モデルの証明とこれに対するTLR拮抗剤の予防効果が認められれば、歯周疾患の治療と予防が腎症の予防に貢献することを間接的に証明したことになります。そこで、培養細胞による解析を開始しました。抗TLR抗体によるブロッキング効果を証明しています。また、Porphyromonas gingivalis TLRリガンド投与糖尿病マウスに対するTLR阻害薬エリトラン(Eisai)による腎症予防効果の解析を開始、統計学的生命予後解析によって検討します。
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Research Products
(2 results)