2016 Fiscal Year Annual Research Report
高周期14族元素π電子系の特性を活かした新規な酸化還元系の構築
Project/Area Number |
15J00061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 裕子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 含高周期14族元素低配位化合物 / 酸化還元挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
高周期14族元素二価化学種(メタリレン)は空のp軌道に起因する高い求電子性とs性の高い孤立電子対に起因する弱い電子供与能を有するため、その電子移動に興味が持たれる。しかしながらメタリレンそのものの単離が困難であるうえに、さらにその還元体や酸化体はより安定性が乏しく、現在までにメタリレンの酸化還元挙動に関する詳細な研究はほとんど報告されていない。一方、フェロセンは安定な酸化還元挙動を示すことが知られており、フェロセニルユニットを導入することで、その安定性が増すことが期待できる。そこで、本研究では、ゲルマニウム類縁体であるゲルミレンの酸化還元挙動を解明する目的でかさ高いフェロセニル基を用い、ビス(フェロセニル)ゲルミレンの合成を行った。 単離したモノリチオフェロセン二量体に対し、ジヨードゲルマニウムを作用させたところ、定量的にビス(フェロセニル)ゲルミレンが得られた。このゲルミレンは可逆で多段階の酸化還元挙動を示した。得られたゲルミレンとブタジエン、ハロアルカン、トリエチルシランとの反応を行うと、それぞれ対応するゲルモレン、ハロゲルマン、シリルゲルマンが得られ、溶液中でゲルミレンとして存在することを明らかにした。X線結晶構造解析により構造を明らかにすることによって、このゲルミレンが安定な酸化還元挙動を示すのは立体的に混み合った構造を有するため、酸化還元の過程で構造変化が小さいためであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた二重結合化合物の合成には至らなかったものの、これまでに酸化還元挙動の報告のない、ゲルマニウム二価化学種であるゲルミレンの酸化還元挙動を解明することに成功した。また、物性と分子構造との関係を明らかにすることができた。今回得られたゲルミレンはハロゲン置換ゲルマニウム二重結合化合物の良い前駆体となることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今回得られたゲルミレンを前駆体としてハロゲン置換ゲルマニウム二重結合化合物の合成を検討するとともに、ゲルマニウム間三重結合化合物の合成に取り組む。また、今回得られた知見をもとにケイ素類縁体の合成検討、性質解明にも取り組み、ケイ素、ゲルマニウムを含み多重結合化合物の酸化還元挙動を系統的に解明する。
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