2015 Fiscal Year Annual Research Report
腸―乳腺―初乳―新生仔と移動するT細胞の遊走機序および抗原特異的機能の解明
Project/Area Number |
15J00536
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
池渕 良洋 大阪大谷大学, 薬学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 乳腺 / 母乳 / 腸管 / 細胞遊走 / B細胞 / KikGRマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「リンパ球が、母親の腸管→乳腺→母乳→新生仔と移動し、新生仔の免疫能に影響を及ぼす」という仮説を構築し、その証明を目指した。まず、母親から新生仔体内へのリンパ球の移動の検出を試みた。光変換蛍光蛋白質KikGRを全身に発現したKikGRヘテロマウスを母親、ワイルドタイプマウスを父親として繁殖させ、KikGRを発現しないワイルドタイプの新生仔のみを実験に供した。KikGR発現とリンパ球マーカーCD45のアロタイプ発現を母親由来リンパ球の指標とし、フローサイトメトリー法によって検出した。その結果、新生仔の腸間膜リンパ節等からKikGR陽性リンパ球の検出に成功したが、CD45アロタイプが母親のリンパ球と一致しなかった。異なる検出法である蛍光顕微鏡による観察でも、蛍光蛋白質発現細胞の検出に成功したが、母親由来リンパ球とは同定できなかった。更なる検討のために、母親をKaedeやTomato等の異なる蛍光蛋白質を発現するマウスに変更したが、母親由来リンパ球は検出できなかった。以上の結果から、本実験系では母親から新生仔体内への免疫細胞の移動は非常に少ないことが示唆された。 次に、上記仮説の一部、腸管から乳腺への免疫細胞の移動の直接証明を試みた。上記のKikGRマウスを実験動物として用いた。光変換蛋白質の性質を利用して、授乳中のKikGRマウスの小腸に紫光を照射し、小腸にいる細胞を赤色(KikGR-Red)にマークした。その結果、乳腺に存在するKikGR-Red陽性リンパ球の検出に成功した。乳腺に存在するCD4陽性T細胞のうち約0.8%が、B細胞のうち約8%がKiKGR-Red陽性であった一方、マクロファージの組織間移動はほとんど検出されなかった。以上の結果から,小腸から乳腺に移動する細胞のメインサブセットはB細胞であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の一部であった母親から新生仔体内へのリンパ球の移動の検出は困難であることが分かった。母マウスの種類、新生仔の日齢、及び、リンパ球マーカー等様々な条件を試みても検出できなかったことより、マウスは本細胞移動の検出に適さないことが示唆された。 一方、腸管から乳腺へのリンパ球の遊走の直接証明に成功した。さらに、遊走するリンパ球のメインサブセットも明らかにした。以上の結果より、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、小腸から乳腺へ移動するB細胞のサブセットと機能について解析を行う。移動するB細胞のメインサブセットがプラズマ細胞である場合は抗体産生機能について、制御性B細胞である場合は免疫抑制機能について解析を進める。 また、小腸から母乳へのリンパ球の移動の検出も試みる。B細胞が小腸から乳腺へ移動するメインサブセットであることを考慮すると、母乳中への移動もB細胞が主たるリンパ球であると予想している。母乳中のリンパ球の機能については不明な点も多いため、抗体産生機能、免疫抑制機能等についての解析を進め、機能の解明を試みる。 さらに、母親から新生仔体内へのリンパ球の移動の検出を、マウス以外の実験動物を用いて試みる。過去の報告よりブタが最適と予想しており、飼育環境の整備を予定している。
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