2015 Fiscal Year Annual Research Report
「器楽教育成立過程の研究:音楽教育研究団体の動向を中心に」
Project/Area Number |
15J01045
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樫下 達也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 器楽教育 / 楽器産業 / 音楽教育研究団体 / 音楽文化 / 戦前と戦後の連続 / 戦後教育改革 / 子どもの音楽生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、器楽教育の成立が、学校内における実践の積み重ねだけではなく、周辺の音楽文化や楽器産業界との関わりのなかでなされたものであるとの仮説のもと、教師が学校外との連携のために設立した各時代の音楽教育研究団体における器楽教育普及活動の実態を中心的課題としている。本年度は、日本器楽教育連盟(1956年設立)の設立過程および活動内容を明らかにし、研究論文「日本器楽教育連盟の設立(1956年)とその音楽教育史上の位置」として神戸大学教育学会『研究論叢』第21号に発表した(2015年6月発行、単著、査読付)。 また、これに続いて、戦後初期の文部省によるわが国初の器楽教科書『合奏の本』の実態を明らかにした。その成果は2015年9月の教育史学会第59回大会の口頭発表「文部省『合奏の本』(1948年発行)とその音楽教育史上の位置」として発表した。 さらに、戦後期に楽器が教育用品としての公共性を獲得し、それにともなって業界が資材の獲得や物品税の減税といった特権を得ていったことを明らかにした。この成果は研究論文「戦後日本における教育用楽器の生産、普及、品質保障政策:文部・商工(通産)・大蔵各省と楽器産業界の動向を中心に」としてまとめ、日本音楽教育学会『音楽教育学』第45号に発表した(2015年12月発行、単著、査読付)。 以上の研究は戦後に関わるものであるが、戦後教育は戦前・戦中の実践から連続する面もあることを考慮し、1930年代に当時行われた器楽教育における合奏形態を分類し、行われたのが授業の内外のどちらであったのかについて考察した。この成果については、2015年10月の音楽教育学会第46回大会において口頭発表「1930 年代の小学校における器楽教育の動向」として発表し、同タイトルの研究論文を『神戸大学人間発達環境学研究科紀要』第9巻第2号(2016年3月発行、単著、査読付)に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特別研究員としての採用後、申請者は、当該テーマである器楽教育成立過程の解明に向けて、精力的に史資料を収集活動にあたった。それらの考察をとおして、戦前から戦後にかけての音楽教育研究団体の実態、戦後の器楽教育の全国的な実施にあたっての行政と楽器産業界の関係などを詳細に明らかにした。 またその成果を、口頭発表2件、査読付の研究論文3本として発表した。 研究論文のうち1本は教科教育学系の学会誌のなかでも掲載されることが難しいとされる日本音楽教育学会『音楽教育学』で、申請者の研究内容の質が、当該分野において高く評価されたものであると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究推進方策としては、基本的には今年度と同様に、地道な史資料の収集とその丹念な読み解き、ということになる。ただ、今年度の研究の進展のなかで、戦後すぐに自主的に器楽教育の実験校として学校をあげて実践研究に取り組んでいたことが明らかになった。次年度はこの学校に焦点をあて、現地に足を運ぶことで一次史料の発掘や戦後改革期に対象の学校で授業を受けた人々からのインタビュー調査なども行い、史料を充実させていく予定である。 また次年度中にこれまでの研究成果をまとめて博士論文を完成させたい。
|
Research Products
(5 results)