2015 Fiscal Year Annual Research Report
英語史における受動構文の通時的変化についての定量的な分析
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15J01083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 佑宜 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 英語史 / 英語学 / 古英語 / 中英語 / コーパス言語学 / 統語論 / 受動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、定量的分析を基盤にした意味記述を通した英語の言語変化を捉えるモデルを構築することを目的としている。英語の分析サイクルの中で、英語の通時的変化の記述と定量的な分析が相互補完的に機能するモデルを考えてきた。 今年度は、「英語史における受動構文の通時的変化の研究」について考察することに主眼をおき、従来の英語史研究において態 “voice”として扱われてきた受動態を構文 “construction”という包括的な視点から通時的に考察を行った。本研究者は申請段階から古英語における2種類の受動構文について分析を行ってきたが、英語の言語構造が大きく変化する後期古英語から初期中英語にかけての過渡期や中英語から近代英語に至る過程を含めて継続的な分析を行った。具体的には、古英語において受動構文を構成するための助動詞beon/wesan ‘to be’, weorthan ‘to become’の交代現象、中英語におけるweorthan‘to become’の衰退の過程について研究を進めた。 ケース・スタディとして、受動構文の働きと密接な関わりを持つと考えられる従属節についての調査を次の2つの観点から行った。一つは、古英語において受動構文を含む従属節中における語順に見られるパターンを記述するという観点であり、二つ目は、受動構文が有意に選択されうる情報構造はどのようなものかという観点である。これらについてDictionary of Old English Web Corpusから得られる言語データを精査し、古英語における受動構文と従属節中の語順の関係性を考察した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の前半では「英語史における受動構文の通時的変化の研究」について考察することに主眼をおき、研究を行った。Dictionary of Old English Web CorpusやCorpus of Middle English Prose and Verseなどから得られる言語データを丹念に精査していくことで、古英語や中英語における受動構文の通時的変化を考察した。また、構文文法の基本文献(Goldberg、Croft、など)の中で今までに扱った以外の文献を精読した。後半では「意味の通時的変化を定量的に表すための分析モデルの提示」を行う前段階として、前半で得られた言語データを対象とした小規模なケース・スタディを行った。 研究計画で予定していた研究内容の一部分しか行うことができなかった為、特筆すべき研究成果が得られなかったが、不足分を遂行した上で次年度での研究発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、今年度に得られた研究結果を基に、「意味の通時的変化を定量的に表すための分析モデルの提示」を行うためのデータベースを作成する。次に、実際にモデルを使って、受動構文とそれに関わる言語現象(過去分詞、不定代名詞、アスペクト、節構造)における記述の妥当性を定量的に検証する。また、その分析を通して、「意味の通時的変化を扱うモデル」を精緻化する。以上の結果をまとめて、国内外の学会発表および、学会誌へ投稿する。
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