2016 Fiscal Year Annual Research Report
英語史における受動構文の通時的変化についての定量的な分析
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15J01083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 佑宜 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 英語史 / 英語学 / コーパス言語学 / 中英語 / 古英語 / 統語論 / 受動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語の歴史において言語構造が著しく変化した後期古英語から初期中英語にかけて受動構文がどのような変化を経たのかという疑問から出発した。これまでは古英語において受動構文を構成するための助動詞beon/wesan ‘to be’, weorthan ‘to become’の交代現象、中英語におけるweorthan ‘to become’の衰退の過程について研究を進めてきた。今年度は、受動構文と密接に関係している語順について12世紀に写字されたと推定されるテクストからのデータの収集と分析を行った。8月にはその成果を京都において開催されたKyoto Postgraduate Conference on English Historical Linguistics 2016にて口頭発表を行い、海外の若手研究者と交流し学ぶ機会を得た。同発表内容に関しては、今年度には間に合わなかったものの研究論文を執筆し出版を待つところである。また、これまでの個別のテクストの精読による質的なデータ分析に加えて、Dictionary of Old English Corpus、York-Toronto-Helsinki Parsed Corpus of Old English Proseなどの大規模コーパスを用いて量的な根拠に基づいた議論を行うためのデータ収集を推し進めた。特に、1) 古英語・中英語における受動構文の生起環境の記述、2) 統語論・語用論のインターフェス、3) 語順が受動構文に及ぼす影響、という3つの観点から研究を進めている。次年度はこれらの研究成果について国内外の学会で研究発表を行い、論文を学術雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの進歩状況は次の2点に集約される。1) 基本文献の精読から得られた方法論を元に分析を行っていくための理論的枠組みを構築した。これにより意味論と統語論の接点という観点から言語分析を行うことができるようになった。 2) 語順と関わりの深い受動構文の分析を進めるにあたり品詞タグ付けコーパスを導入した。古英語のコーパスはYork-Toronto-Helsinki Parsed Corpus of Old English Prose、中英語についてはPenn-Helsinki Parsed Corpus of Middle Englishを利用している。両コーパスの導入により、本研究が分析対象としている用例のみならず、分析対象と関わりのある言語現象も含めたより包括的なデータ収集・言語分析を行うことができるようになった。上記の1)と2)を合わせて古英語から中英語にかけてのテクスト精読とデータ収集を進めている。分析の基盤となるフレームワークとこれまでより大規模なデータ収集を行うための手段を整えたことを踏まえ研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究を更に進めながら博士論文の執筆を行いたい。本研究は博士論文を構成する各論として位置づけられることを念頭にした具体的な執筆計画を練り、取り扱う範囲を明らかにする。執筆と並行して、個別のテクストについての研究成果を国内外の学会において口頭発表し、学会誌へ投稿することも合わせて行いたい。また、研究成果を公表していくことで分析の基盤となるフレームワークの更なる精緻化を進めていくことも狙いとしたい。
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Research Products
(2 results)