2015 Fiscal Year Annual Research Report
創薬ターゲット蛋白質細胞内1分子スクリーニング法の開発
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15J01482
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
出川 拓馬 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | GPCR / 1分子イメージング / 相互作用解析 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画にあった1分子イメージングを用いた分子間相互作用の検出を実施するための準備を主に行った。1分子イメージング用のタグを導入したGPCR発現ライブラリの構築が55種類中23種類完成した。この中には本年度別のグループから報告があった葉酸受容体GlrLも含まれる。そのうち形質膜への発現が確認できたものは7種類にとどまっている。また葉酸のガラスへの固相化は、スクシンイミドを導入した葉酸をアミノ化したガラス表面に固相化することにした。葉酸が持つカルボニル基に縮合剤としてECDを利用することで、スクシンイミドを導入した葉酸を合成した。また、アミノシランカップリング反応によりガラス表面をアミノ化した。アミノ化の評価はNHSローダミンを利用して蛍光顕微鏡を用いて行った。ガラス上のアミノ基へのNHSを介した化合物と導入は、両親媒性溶媒であるジメチルスルホオキシド中で行うのが適当であることを見出した。また、アミノシランカップリング反応は、水酸化カリウム中で超音波処理したガラスを用いて行うのが適当であることがわかった。 また別の実験から、GTP型ARFAとPTENとの細胞膜上での新規の物理的な相互作用が予想された。そこで、GTP型に固定したARFAに膜貫通ドメインを融合させて細胞外にHaloTagを露出させたタンパク質を発現する細胞を作製した。ビオチンリガンドによって細胞外HaloTagをビオチン化し、Nuetravidinを介して、ガラス上のビオチンと結合させることでGTP型ARFAの拡散運動を固定化した。固定化処理を行うことで拡散する成分が減少していることを、FRAPを用いて確認した。さらに、1分子イメージング用のHaloTag融合PTENを共発現した細胞の作製が完了した。今後は、GTP型ARFAをガラス上に固定化した細胞でPTENの拡散係数を測定し、相互作用の有無を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1分子スクリーニングに利用するGPCR発現ライブラリの整備に遅れが見られるほかは順調に進展している。いまのところ葉酸のガラス上への固相化は評価できていないが、同様の反応を利用した場合にガラスのアミノ化とNHSを導入した化合物の固相化が十分に可能になっていることを示している。GPCR発現ライブラリの整備が終了すれば、速やかに細胞内1分子スクリーニング法により、GPCR型葉酸受容体のスクリーニングに取り組める。また当初の研究計画にはなかったが、別の実験からPTENとGTP型ARFAとの間に形質膜上での物理化学的な相互作用が存在する可能性が示唆されるので、本研究で提案している細胞内1分子イメージングを利用した形質膜上での相互作用検出を適用することにした。この実験に必要なプローブ発現細胞およびビオチン化ガラスの作製は完成している。
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Strategy for Future Research Activity |
GPCR型葉酸受容体は、本年度に別グループから同定の報告があり、葉酸への走化性運動やバクテリアに対するファゴサイトーシスにおいて重要な役割を果たしていることが明らかにされた。しかしながら、リン酸化プロテオミクスを利用した手法での同定であり、本研究で提案している細胞内1分子イメージングによりGPCRとリガンドの相互作用を検出する系を確立することには十分な意義がある。そこで、当初計画していたGPCR型葉酸受容体の細胞の運動や生存における生理学的な機能を追及することはせず、細胞内1分子スクリーニング法を汎用的な分子間相互作用の新たな検出法として確立すること目指す。GPCR発現ライブラリの整備に遅れが見られることから、リガンド既知の葉酸受容体GlrLおよび環状AMP受容体cAR1とリガンド-受容体相互作用の検出を行い本手法の有用性を示す。さらには形質膜上のタンパク質間相互作用の検出法の開発も行っていく。細胞質タンパク質を細胞膜貫通ドメインを有するタンパク質と融合発現させ、細胞外領域をガラス上に固定化することで、細胞膜上の相互作用を拡散係数の変化として顕在化させる。具体的には、別の実験から示唆されているPTENとGTP型ARFAの形質膜上での相互作用をターゲットとする。
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