2015 Fiscal Year Annual Research Report
ハプティックデバイスを用いた脳腫瘍摘出手術シミュレーション
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15J01496
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
陳 暁帥 北海道大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 手術シミュレータ / 損傷モデル / 有限要素法 / 生体組織引張実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,脳の島皮質に生じる腫瘍の摘出手術を対象として,脳外科手術シミュレータを開発しています。脳外科手術ではシルビウス裂を開放しながら,島皮質にアプローチし,病変部を鋭的や鈍的剥離で摘出します。開放や摘出の際脳挫傷や余計な脳組織の摘出などが起こると,機能予後や生命予後が左右される。そのため,脳の損傷を表現し,操作者に高精度な視覚と力覚を提示することが必要である。 この脳腫瘍摘出手術シミュレーションにおける重要な課題であった損傷モデルを提案しました。現存の破壊モデルは脳実質の特有な破壊挙動を再現できないため,新しい損傷モデルを開発しました。損傷力学の理論に基いて,独自の損傷発生指標を定め,損傷の進展法則を定義し,脳組織の破壊様子を表しました。特に損傷が発生するときの反力についても計算されました。 また,提案した損傷モデルの精度を高めるため,豚の脳実質を用いて,引張実験を行いました。異なった引張速度で試験片の上下部を完全分離するまで引っ張りました。その実験データに基いて,損傷モデルに必要なパラメータを同定しました。また,同定したパラメータを用いてシミュレーションを行い,実験結果と比較しました。比較した結果,損傷の進行によって脳の特有な剛性降下のひずみ応力曲線と異なる引張速度により生じるひずみ応力曲線の相違を精度よく再現できることがわかりました。この損傷モデにより,は脳外科手術シミュレーションがより正確な計算結果を提示することが期待されています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.脳モデルの構築について,粘弾性を組み入れました。 2.脳外科手術シミュレータの構築について,没入型ハプティックシステムが整備されましたが,全脳モデルを用いるシミュレーションはまだ完成していないため,シミュレータ全体の構築は進行中です。 3.損傷モデルについて,脳組織の生物力学特性を考慮した損傷の表現モデルを構築し,切開指標や開放する瞬間の力について計算手法を構築しました。 4.平成28年度に予定した動物の脳組織を用いた動物実験について,粘弾性モデルと損傷モデルに必要なパラメータの測定とモデル妥当の検証のために,平成27年度に豚の脳モデルを用いた引張実験のデータを分析しました.
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Strategy for Future Research Activity |
1.提案した損傷モデルが現存のモデルより優位性があることを強化します。また,損傷モデルを全脳モデルに組み入れ,脳腫瘍摘出手術シミュレーションを構築します。 2.脳腫瘍摘出手術シミュレーションを没入型ハプティックシステムと接続し,視覚と力覚両方提示できるシミュレータを構築します。 3.損傷の発生につれて全体の剛性マトリクスの再計算が必要になるため,モデルのノード数が千単位である場合,シミュレーションが実時間で動くことはできます。しかし,全脳モデルのノード数は万単位であるため,実時間について更に改善する必要があります。
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