2015 Fiscal Year Annual Research Report
伴侶動物の腫瘍における免疫抑制因子を標的とした新規免疫療法の開発
Project/Area Number |
15J01989
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前川 直也 北海道大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | イヌ腫瘍 / 抗腫瘍免疫 / 免疫療法 / 免疫チェックポイント / PD-1 / PD-L1 / 抗体医薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イヌの腫瘍治療を目的として免疫抑制因子Programmed death-1(PD-1)およびPD-ligand 1(PD-L1)の発現解析・機能解析を行う。さらに治療用抗PD-L1抗体を作成し、腫瘍罹患犬を用いた臨床試験を行い、その治療効果を評価することが最終目標である。 まず本治療法の対象腫瘍を決定するために、種々のイヌ腫瘍サンプルを用いて免疫染色を行い、PD-L1発現の網羅的解析を行った。口腔内メラノーマ、骨肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫、乳腺腺癌、前立腺癌でPD-L1発現が認められた一方、リンパ腫ほか6種類の悪性腫瘍では発現が見られなかった。また、新鮮腫瘍サンプルより腫瘍浸潤リンパ球を分離し、リンパ球上のPD-1発現陽性率を測定したところ、口腔内メラノーマより分離した浸潤リンパ球でPD-1発現が正常コントロールに比べ高かった。この結果はイヌ口腔内メラノーマにおいてPD-1/PD-L1経路が免疫抑制に関与していることを裏付けるものであり、本治療法の標的となりうることを示すものであった。 次に、イヌPD-1/PD-L1結合を阻害できることが明らかとなったラット抗PD-L1抗体の遺伝子配列から、抗PD-L1治療用抗体の発現ベクターを作成した。本発現ベクターを哺乳類細胞へ導入し、治療用抗体の安定発現細胞を樹立した。クローニングおよび遺伝子増幅処理(dhfr-MTX)法を段階的に行い、高発現細胞を樹立した。現在、170 mg/Lの抗体を産生する細胞株を得ており、最終的には1-2 g/Lの発現量を見込んでいる。 腫瘍罹患犬での臨床試験を行う前に、安全性試験として実験用犬に抗PD-L1治療用抗体を投与した。ビーグル1頭に対し、2週間間隔で全3回、投与量2 mg/kgにて治療用抗体の複数回投与を行ったところ、アナフィラキシー等の急性の副作用は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、種々の腫瘍におけるPD-L1発現解析や、腫瘍関連リンパ球上のPD-1発現解析を行い、本治療戦略の対象となりうる腫瘍を決定することができた。また治療用抗体の大量生産系の樹立では、過程を順調にこなし、28年度中の完了を実現させる見通しが立ちつつある。また治療用抗体の安全性試験にも着手し、アナフィラキシー他の明らかな免疫関連副作用は今のところ観察されていない。さらに、ネコにおいても抗PD-L1抗体が交差反応性を示し、免疫染色にて乳腺腺癌でのPD-L1発現を認めるなど、ネコ腫瘍治療への応用にも一定の成果が見られている。 一方でPD-L1の予後因子としての有用性の検討は平成27年度中に完了することができなかったため、平成28年度でも継続して行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、治療用抗体の大量発現系の樹立を継続し、平成28年度中の完了を目指す。具体的には、メトトレキサートによる遺伝子増幅処理を段階的に行うことで発現量の増大を行い、1-2 g/Lの抗体発現量を持つ細胞株を樹立する。また特に口腔内メラノーマにおいてPD-L1発現の有無と生存期間の相関を解析し、予後診断マーカーとしての有用性を検討する。 さらに、作成した治療用抗体を用いたさらなる安全性試験及び腫瘍罹患犬(特に口腔内メラノーマ)に対する臨床試験を行い、本治療用抗体の安全性及び抗腫瘍効果を評価する。治療用抗体の血中濃度および血中半減期を測定し、最適な投与量や投与間隔について検討を行う。 ネコPD-1/PD-L1結合を阻害する抗PD-L1抗体があれば、その抗体を用いてリンパ球機能を増強することができるか検討する。増強効果があれば、ネコ治療用抗PD-L1抗体の作成に着手する。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Development of novel immunotherapy against dog tumors by targeting immune checkpoint molecules, PD-1 and PD-L12015
Author(s)
Maekawa N, Konnai S, Ikebuchi R, Okagawa T, Adachi M, Takagi S, Kagawa Y, Murata S, Ohashi K
Organizer
The 3rd Sapporo Summer Seminar for One Health
Place of Presentation
Hokkaido University, Sapporo, Hokkaido, Japan
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-17
Int'l Joint Research
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