2015 Fiscal Year Annual Research Report
科学技術政策の行政学研究―戦後日本の気象行政の構造分析
Project/Area Number |
15J02275
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若林 悠 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 科学技術政策 / 気象行政 / 技術官僚 / 専門性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学技術政策の構造分析に焦点を当て、その一事例として気象庁による戦後日本の気象行政の構造を考察するものである。この課題に対して本研究は、①現状分析を通じて気象庁の行政組織としての特徴を析出すること、②戦後日本の気象行政の歴史的経緯を明らかにすること、③科学技術と政治の交錯過程を捉える適切な分析視角を構築すること、という3つのアプローチから取り組んでいる。 本年度は、当初の研究計画に沿って次のような作業に従事した。第1に気象庁に関する一次資料及び二次資料について網羅的な収集ができた。気象庁や気象学に関する資料状況を確認し、気象行政の関係資料を発見することができた。第2に本年度は、気象庁関係者に対するインタビュー調査を精力的に行った。インタビュー調査の実施は長官経験者を含めて幅広く行い、気象庁の歴史的背景や気象行政の現状についての重要な知見が得られた。 第3に本年度は、科学技術と政治の交錯過程を捉える適切な分析視角の構築を目指して、科学技術政策や技術官僚に関する先行研究の文献渉猟とレビュー作業に取り組んだ。先行研究の調査を進めるなかで、近年の行政学は官僚の専門性に関する研究が進んでおり、その成果の多くは科学技術政策や技術官僚の研究蓄積に依拠していることを発見した。本年度は先行研究のレビュー作業を通じて、適切な分析視角を構築する手がかりを得ることができた。 第4に本年度は、学術論文の公表作業に取り組んだ。科学技術政策の構造分析を進めるにあたり、比較基準とした産業政策の構造分析の研究に関して、理論と事例分析のさらなる調査を進め、研究の修正を行うことができた。この成果は、学術論文「1950年代の海運政策と造船疑獄―計画造船における政治と行政」として、日本行政学会の機関誌である『年報行政研究』に投稿した。同論文は、査読を通過し、2016年5月に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、資料調査や投稿作業を順調に遂行することができた。第1に気象庁に関する一次資料及び二次資料の収集に網羅的かつ精力的に取り組んだ。国立国会図書館や大学図書館を中心に気象庁の組織資料、気象庁関係者の回顧録、気象学の学説史などの関係資料の存在を確認し、幅広く集めることができた。これにより、気象庁の組織的特徴や各種の政策・制度的概要の把握が可能となり、気象庁の行政組織としての特徴を析出するための基礎的な考察が進展した。 第2に今年度は気象庁関係者に対してインタビュー調査を精力的に行った。インタビュー調査の実施は長官経験者を含めて幅広く行うことができ、気象庁の歴史的背景や気象行政の現状についての重要な知見が得られた。 第3に科学技術政策や技術官僚研究に関する先行研究の文献渉猟とレビューに取り組んだ。先行研究の調査を進めるなかで、近年の行政学は行政過程における専門知識の重要性に着目した専門性に関する研究が進んでおり、その成果の多くは科学技術政策や技術官僚の研究蓄積に依拠していることを発見した。本年度は先行研究の調査とレビュー作業を通じて、科学技術と政治の交錯過程を捉える適切な分析視角を構築する手がかりを得ることができた。 第4に気象行政と緊密に関係している環境行政に関する調査により、気象行政と環境行政の連関性を再確認することができた。これにより、気象行政と他の行政活動との比較に向けた事例分析の着想を得ることができた。 以上の4点から、「(1)当初の計画以上に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
気象庁の関係資料については、一次資料・二次資料ともに相当程度の分量を収集することができた。しかしながら、本年度に存在は確認したものの未見の状態の資料があり、さらに調査の過程で新たに収集すべき関係資料を発見したため、継続的な資料調査を行う必要がある。 また、気象庁関係者へのインタビュー調査も引き続き精力的に行わなければならない。これまで長官経験者を含めて幅広く行ってきたが、口述資料の蓄積としてはまだまだ不十分である。様々な関係者へのインタビュー調査を実施することで、文献資料と口述資料、あるいは口述資料同士のクロスチェックが可能になり、実証的な研究が可能となる。それゆえ次年度はさらなる口述資料の充実化を図りたい。 加えて、本年度は気象行政と緊密に関係する環境行政に関する調査も行い、行政活動の比較研究のための手がかりを得た。しかしながら、環境行政の調査のみならず気象行政を比較するために他の行政活動の調査を行い、気象行政の特徴に関する考察をさらに進展させる必要がある。 以上の継続的な調査を行うことと並行しつつ、理論構築の作業では、引き続き科学技術政策や技術官僚の専門性に着目した研究の理論的蓄積を把握し、さらなる分析視角の精緻化を行う必要がある。とりわけ行政一般に適用可能な概念を抽出することが望ましい。このため今後のレビュー作業では官僚の専門性や科学史の研究成果を検討し、次年度は適切な分析視角の構築を試みる。さらに構築した分析視角をもとに、次年度は実証研究の作業に着手する予定である。
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