2016 Fiscal Year Annual Research Report
地震防災促進要因としての記述的規範の効果と認知プロセス:解釈レベル理論に基く検討
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15J02505
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
尾崎 拓 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 防災 / 社会心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
防災行動の促進につながる社会心理学的知見を得るため、記述的規範に着目した実証的な研究を継続した。本年度は、記述的規範 (多数派がどのように振る舞っているか、という情報にもとづく規範) が防災行動を促進するかどうか検討した。本研究では、記述的規範は、「多数派が防災行動として防災用リーフレットを閲覧している」という情報を提示することで形成させた。実験では、この情報を提示し、実験参加者が記述的規範の影響によって、防災行動が喚起されるかどうかを確認した。さらに、本研究では、記述的規範を提示することが、かえって防災行動を忌避させる負の効果が生じるという懸念についてもあわせて検討した。これは、もともと防災行動の必要性を認識していない実験参加者に記述的規範を提示した場合、態度と一貫する情報である、「防災行動をとっていない人たちがいる」ことへの着目が生じてしまうおそれがあるからである。事前に統計的に設定した必要サンプル数を満たすように、インターネット上でアメリカ人実験参加者を募集することを継続した。実験の結果、従来得られていたように、記述的規範が防災への態度だけでなく行動を促進することが確かめられた。一方で、記述的規範の負の効果が存在するという証拠は得られなかった。この結果は、記述的規範にもとづく防災行動促進アピールの応用可能性を示すものだと考えられる。今後は、日本人を対象として得られたこれまでのデータと、今回のアメリカ人を対象として得られたデータを総合し、より有効な防災行動促進アピール方法を検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
統計的に妥当なデータ数を収集することが困難であった。データ収集の困難さは当初から予測できたため、クラウドソーシングサイトを利用し、インターネット上でアメリカ人を対象として実験参加者を募集したが、データ収集に想定よりも時間がかかった。また、誠実でない実験参加者を排除するための工夫やその統計的処理への対応が必要であった。繰り越した研究費は、追加的な実験参加者募集のために支出する予定であったが、サンプルプールの質の低さを考慮し、統計的な対応を実施することで問題を回避することにした。このため、データ収集を完了とし、当年度の研究費執行をしなくても問題がなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
頑健な知見としては、アメリカ人を対象とする実験を実施した場合であっても、日本人を対象として得られた結果と共通して、記述的規範が有効に防災行動を促進する可能性が見いだされたことであった。今後は、行動以外の心理変数にも着目することで、より有効な防災行動促進アピールの方法を検討する必要があると考える。また、必要なデータ数が収集できなかった場合に、仮説を分解してより妥当な統計的手法を適用することを検討する必要がある。
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