2015 Fiscal Year Annual Research Report
ハダカデバネズミ特異的な"低体温"が制御する寿命制御機構の解明
Project/Area Number |
15J02890
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮脇 慎吾 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ハダカデバネズミ / 細胞生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハダカデバネズミは、マウスと同等の大きさながら異例の長寿(約30年)であり、その生涯の間に極めて腫瘍が発生しにくいというがん化耐性の特徴をもつ。申請者は、ハダカデバネズミの長寿の原因として「低体温」に着目した研究を行った。ハダカデバネズミの線維芽細胞は、マウスの線維芽細胞の至適温度条件(37℃)では培養維持が不可能であり、極めて温度感受性が高いことを明らかにした。このことから、ハダカデバネズミにおいては、細胞自律的な温度上昇に抵抗する機構が存在することにより個体の低体温が規定されている可能性があると考えられた。次に、申請者はSV40ER遺伝子をハダカデバネズミ線維芽細胞に導入し、その細胞が37℃での温度感受性を有しているか検証した。結果として、SV40ER導入細胞は増殖速度が上昇し、37℃でも増殖停止を起こさなかった。よって、p53経路、Rb経路が破綻した場合にはハダカデバネズミ細胞は37℃で増殖停止を起こさないと考えられた。 また、本年度はハダカデバネズミiPS細胞は種特異的に腫瘍化耐性を示す事を学術雑誌に投稿したので、その概略を記す。一般的に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、免疫不全マウスへ移植した際に腫瘍(奇形腫)を形成する能力を有する。申請者はがん化耐性動物であるハダカデバネズミからiPS細胞を作製し、その腫瘍形成能を検証した。ハダカデバネズミiPS細胞は培養下での分化能を持つにも関わらず,未分化な状態で生体に移植しても,他の動物のiPS細胞のように腫瘍を形成しないことが判明した。この腫瘍化耐性メカニズムを解析した結果、ハダカデバネズミiPS細胞は,がん抑制遺伝子ARFの活性化とがん遺伝子ERASの機能欠失により腫瘍化耐性をしめすことが明らかになった。さらに,マウスiPS細胞でハダカデバネズミと同様にArfを活性化させると腫瘍形成能が強く抑制されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ハダカデバネズミから作製したiPS細胞は種特異的な癌抑制遺伝子ARFの発現様式により腫瘍化耐性をしめすことをを解明し、その内容を英科学雑誌Nature Communicationsに投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、低体温が規定するハダカデバネズミの長寿/老化耐性の分子基盤を解明するために、温度感受性に関与することが報告されている遺伝子(TRP受容体など)の遺伝子配列や発現を解析する。また、ハダカデバネズミ培養細胞のマウス培養温度(37℃)とハダカデバネズミ培養温度(32℃)での遺伝子発現の比較などから、ハダカデバネズミ培養細胞が37℃で増殖停止を引き起こす原因遺伝子を同定したい。
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Research Products
(5 results)