2015 Fiscal Year Annual Research Report
座位行動が肥満および糖・脂質代謝指標に与える影響に関する前向きコホート研究
Project/Area Number |
15J03431
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
本田 貴紀 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 座位行動 / 身体活動 / メタボリックシンドローム / 糖脂質代謝 / 疫学 / コホート研究 / 加速度計 |
Outline of Annual Research Achievements |
岡山県内の企業従業員を対象に、加速度計を用いて評価した座位時間とメタボリックシンドローム発症との関連を、健康診断のデータから検討した。対象は2009年から2012年の間に企業健診と身体活動量検査を受けたメタボリックシンドロームを有していない男女である。健康診断の成績を2013年度まで毎年追跡し、メタボリックシンドロームの発症を評価した。メタボリックシンドロームは世界統一基準に基づいて判定した。座位時間は、起床から就寝までの活動を1日あたりに換算して算出した。座位時間は活動強度が1.5メッツ以下の活動時間を集計した。Cox比例ハザードモデルを用いて、座位時間とメタボリックシンドローム発症との関連を検討した。その結果、加速度計で測定した座位時間のうち、30分以上継続する座位時間がメタボリックシンドローム発症と有意に関連することが明らかとなった。本研究の結果は、英文誌に投稿中である。 また、福岡県久山町の地域住民を対象に加速度計を用いて評価した座位時間とメタボリックシンドロームの有病率との関連を横断的に検討した。ロジスティック回帰分析を用いて、座位時間とメタボリックシンドローム有病率との関連を検討した。その結果、座位時間が長いほど性・年齢調整したメタボリックシンドロームの有病率は有意に上昇した。これらの関連は多変量解析で他の危険因子を調整しても変わらなかった。性・年齢階級別(40~64歳と65歳以上)にみても、同様の関連が認められた。以上より、加速度計を用いて測定した座位時間は、他の危険因子とは独立してメタボリックシンドロームの有病率と正の関連を示すことが示唆される。本研究の結果は、国際身体活動・公衆衛生会議へ発表演題として抄録を投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、我が国の勤労者および高齢者を対象として、加速度計で測定した座位行動と心血管代謝系因子の関連について、検討を行うことを目的とした。今年度は、勤労者を対象としたデータの整備と、高齢者を対象としたデータの解析を実施する予定であった。はじめに、解析に先立って、身体活動・座位行動に関連する疫学研究について先行研究のレビューを行った。このレビューの成果を九州体育・スポーツ学会トピックセッションにてシンポジストとして発表した。また、座位行動の疫学研究に関して、書籍の一項を執筆した。 勤労者を対象とした調査のデータ整備が当初の予定よりも早く進行したため、次年度に予定していた座位行動とメタボリックシンドロームに関係について前向き追跡研究の手法で解析を行った。得られた成績については、現在論文を投稿しており、査読中となっている。 さらに同年10月より同大学院医学研究院環境医学分野において福岡県久山町における疫学調査(久山町研究)に従事している。平成27年度は、久山町の40歳以上の地域住民を対象に加速度計を用いて評価した座位時間とメタボリックシンドロームの有病率との関連を横断的に検討した。ここでは身体活動・座位行動とメタボリックシンドロームの関連について検討し、興味深い成果を得た。この成績は2016年度に行われる国際身体活動・公衆衛生会議に発表演題として応募中である。 平成27年度中に予定していた解析をおおむね完了しており、さらに研究計画では含めていなかった地域一般住民における解析にも着手できたことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成27年度に行った久山町研究の成果を論文化していく予定である。現在、縦断解析を進めている段階にある。 当初の計画では福岡県篠栗町で展開している高齢者コホート研究のデータを用いる予定としていたが、平成27年度に計画を変更して、久山町研究のデータを利用して解析を行った。今後も同データを利用する予定である。その理由として、篠栗町と久山町は隣接した自治体であることからライフスタイルが似通っていると思われる。また、久山町研究は長期にわたって続いているコホートであり、住民が研究参加に協力的であるため、篠栗町と比して健診参加率が非常に高い。そのことから、久山町研究で得られた成果はより一般化しうるものであると考えられる。
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Research Products
(2 results)