2016 Fiscal Year Annual Research Report
言語間漢字同形語における語彙統語情報制御の実験的検討
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15J03617
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
熊 可欣 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 日中同形語 / 日韓同形語 / 語彙処理 / メンタルレキシコン / 語彙的統語情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日中同形語および日韓同形語に関して,言語間での語彙的統語情報のずれによる制御困難が生じるかをテスト調査および実験で検討することによって,言語間同形語の語彙的統語情報の処理における非選択的な活性化という現象がどこまで適用されるかを明らかにすることである。 それを踏まえて,平成28年度は日本国内,韓国のソウル,中国の天津でテスト調査および実験を行った。日本国内では,まず,上級または超上級の中国人日本語学習者を対象に,視覚提示の語彙性判断課題を用いた脳波実験を実施し,日本語の漢字語処理において中国語の語彙的特性の影響を実証した。 また,上級または超上級の韓国人日本語学習者を対象に日韓同形語の行動実験を行い,韓日バイリンガルによる漢字語の処理メカニズムは中日バイリンガルの処理メカニズムと異なることを検証した。そして,韓国のソウルにある大学では,中級の韓国人日本語学習者を対象に実験を実施し,日韓同形語の処理過程においてどのような要因が影響しているかを実証した。 最後に,中国の天津にある大学で,日本語学科2年生と3年生を対象に,日本語の語彙テスト,文法テストおよび日中同形同義語の品詞に関するテスト調査を実施した。その結果,日中両言語で品詞が共通していても,同形語の品詞が正しく理解できるとは限らないことが分かった。それに,日本語の語彙知識が豊富な学習者であっても,中国語の品詞情報の影響がなかなか抑えられないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では,前年度からの研究成果についての論文を投稿し,次年度に向けて博論執筆のためのデータを収集した。具体的には,①上級または超上級の中国人日本語学習者による言語間同形同義語の処理,②上級または超上級の韓国人日本語学習者による日本語の漢字語処理,③中上級の中国人日本語学習者による日中同形同義語の品詞の習得過程について実験とテスト調査を実施した。当初計画とは変更が生じた部分があったが,上級および超上級の日本語学習者だけではなく,中級の学習者の漢字語処理過程も実証した。研究目的の達成にむけて研究課題を進めている。したがって,研究の進捗状況としては概ね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であり,今年度で集めた各実験・調査結果をまとめ,早い段階で博士論文を完成させる。同時に,それぞれを独立した研究成果として学会発表,投稿論文の形で随時公表していきたい。また,博士論文が終了してから,文レベルでの言語間同形語の処理メカニズムについて実証し,得られた研究成果を年度末までに発表したい。
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Research Products
(4 results)