2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J04302
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上原 貴大 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 生物時計制御 / 合成化学 / 小分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物に備わる生物時計は、発芽や開花といった生殖活動に加え、寒冷耐性、乾燥耐性などのストレス応答までも制御する重要な仕組みである。従って、植物の生物時計を人工的に制御することができれば、植物の増産やストレス耐性植物の生産に繋がり、食料問題やバイオマス問題を解決する有用な手段となることが期待される。そこで本研究では、小分子による植物の生物時計制御、解明に挑戦した。小分子を用いることができれば、野生植物に即座に実用することが可能となる。また、合成化学を駆使することで、小分子の迅速な誘導化ができるため、より強力に作用する小分子の創製に繋がる。現在までに、市販のライブラリー化合物を用いたスクリーニングによって、植物の生物時計を制御する分子を3つ同定することに成功している。 今年度は、昨年度発見した植物の生物時計制御分子であるTU-892を用いたケミカルバイオロジー研究に加え、最近新たに発見した、植物のみならず、動物の生物時計をも長周期化する分子、PHAの作用機構解明を行った。具体的には、PHAの誘導化を行い、同分子の作用部位を同定した(構造活性相関研究)。その後得られた知見を用いて、PHAプローブを合成し、同分子の標的タンパク質の同定を行った。その結果、カゼインキナーゼ1(CK1)とグリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)がPHAの標的タンパク質であることが明らかにした。この2つのキナーゼファミリーは、いずれも植物の生物時計を構成するタンパク質として同定されていないため、本研究は植物の生物時計の仕組みの解明に貢献できたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
植物の概日リズムを長周期化する分子「PHA」を化合物スクリーニングにより発見した。また、その構造活性相関研究及び標的タンパク質の同定を行った結果、カゼインキナーゼ1(CK1)とグリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)がPHAの標的タンパク質であることを明らかとした。本研究は、CK1とGSKが植物の生物時計を構成する、新たな時計因子である可能性を示唆した初の例であることから、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
PHAはシード化合物であり、実用化にはより強力な生物時計制御分子の創製が必要となる。同定したキナーゼとPHAの計算化学によるドッキングスタディから最適な分子構造を導出する。その構造を基に、合成化学により分子構造を最適化、活性評価を行う。
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Research Products
(3 results)