2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J05092
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水内 良 大阪大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 実験進化 / 遺伝子数の増加 / 複雑化 / 共進化 / 生命の起源 / 自己複製 / RNA複製 / 人工細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生物のようにゲノム複製と遺伝情報の読み出しを介して自己複製する単純な実験モデルの遺伝情報を拡張すること、またその拡張モデルを進化させ、遺伝情報の増加がもたらす進化的利点、および欠点とその進化的解決策を知り、単純な生命がいかに複雑化したかを理解することを目的としている。実験モデルはRNAと再構成型無細胞翻訳系を組み合わせて構築され、遺伝情報の拡張は、自己複製を促進する新たな遺伝子をコードし複製可能なRNAをモデルに組み込むことで行う。
今年度は複製可能なRNAの構築を、特に自己複製を促進するとわかった翻訳タンパク質RF1に着目して行った。RF1を遺伝子として組み込んだRNAは複製効率が低いため、RNA構造の理論的デザイン、および進化的手法による複製効率の改善を試みた。まず、RF1をコードしたRNAに55個の同義変異を導入した結果、複製能を約3.5倍改善することに成功した。さらに、よく機能しかつ複製するRNAが選択される進化実験系を構築し、操作を繰り返した結果、9個の変異が固定され、RNAの複製能はさらに4倍程度改善した。しかし一方でRF1の機能が失われてしまった。これはRF1の機能による選択効率が十分でなかったからだと考えられる。
以上の結果から、目的のRNAは取得できなかったが、一方で進化的な複製効率の改善に必要な機能選択効率をある程度見積もることができた。また複製効率を進化させることが可能であるということがわかった。今後、より機能選択効率の高い遺伝子をコードさせることで、今回の問題を解決し、十分複製しかつ機能するRNAが得られ、目的の実験モデルが構築できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の1つは新たな遺伝子をコードしたRNAを組み込むことによる自己複製実験モデルの拡張である。今年度はRF1の機能選択効率が低く、遺伝子の機能を保ったまま複製可能なRNAを取得することができなかったが、今年度の結果から解決すべき問題点が明らかになり、また進化的手法においてどのくらい選択効率が必要かが見積もられたことは大きな進展である。今後、明らかになった問題点を解決することで目的のRNAを取得できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAにコードさせる新たな遺伝子として、翻訳タンパク質以外の遺伝子についても検討する。現在、文献調査や簡易実験から、NDK (Nucleotide diphosphate kinase) などのヌクレオチド合成酵素をコードすることで目的の実験系が達成できそうだとわかってきた。そのため、それらのタンパク質をコードした新たなRNAを用いて目的の実験モデルの構築を目指す。
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Research Products
(4 results)