2016 Fiscal Year Annual Research Report
移植効率の向上を目指した精子幹細胞の宿主内ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
15J05243
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
中村 隼明 基礎生物学研究所, 生殖細胞研究部門, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 精子幹細胞 / マウス / 精細管内移植 / 幹細胞ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マウスをモデルに用いて、精子幹細胞の宿主内ダイナミクスを解明し、その知見に基づいて現在極めて低い精子幹細胞の移植効率を実用可能なレベルまで向上させることである。 平成28年度は、宿主マウス精細管内に移植した精子幹細胞の挙動をライブイメージング法により連続観察し、得られた挙動のパラメータを用いてマウス精子幹細胞の宿主内ダイナミクスの数理モデルを構築した。 麻酔下で維持した宿主マウス精巣内の精子幹細胞の挙動をライブイメージング法により2~4日間連続観察した。その結果、精細管内移植後に基底膜上に到達した精子幹細胞は、特定の場所に留まるのではなく、仮足を伸ばして遊走する様子が観察された。これらの精子幹細胞は、単独あるいは細胞間橋により連結した合胞体を形成しており、不完全分裂と細胞間橋の断片化を繰り返すことでこれらの状態を行き来する様子が観察された。精子幹細胞の不完全分裂と断片化は、精子形成の再生過程(移植4日後)では定常状態より4倍高い頻度で起きていたが、再生後(移植90日後)には定常状態と同程度に戻っていた。また、精子形成の再生過程では精子幹細胞の細胞死も観察された。 続いて、これらのパラメータを用いて精子幹細胞の宿主内ダイナミクスを数理モデルで表現し、昨年度の研究成果である精子幹細胞の移植後のクローン解析の結果との整合性を検証した。その結果、数理モデルの妥当性が確認され、精子幹細胞はストカスティックに振舞っていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精子幹細胞は、移植後のダイナミクスを単一細胞レベル解像度で解析可能な唯一の組織幹細胞である。本研究は、世界に先駆けて宿主マウス精巣内の精子幹細胞の挙動の観察より得たパラメータを用いて数理モデルを構築することに成功した。この数理モデルによって、精子幹細胞ダイナミクスの全体像が明らかになりつつあり、幹細胞生物学の研究分野に大きなインパクトを与るものと期待される。さらに、この数理モデルは精細管内移植の効率を飛躍的に改善する技術開発につながると期待される。 これらの研究成果に基づいて、最終的な目標に向けておおむね順調に研究が進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、宿主精巣内の精子幹細胞の挙動を制御する方法を開発することにより、移植効率の改善を図る。また、これらの結果とin silicoの予測を比較することで、数理モデルを検証し、更に改良を進める。 以上の研究により得られた結果を取り纏め、成果の発表を行う。
|
Research Products
(5 results)