2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J05373
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 正樹 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | Schubert多項式 / Kraskiewicz-Pragacz加群 / 最高ウエイト圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書にも記した通り、Schubert多項式とKraskiewicz-Pragacz加群についての研究を行ってきた(申請書に記した課題名では「Schubert加群の研究」を行うとなっているが、これはKraskiewicz-Pragacz加群と同じものである:Schubert加群という用語はすでに関連分野で他の概念を指す言葉として使われていることがわかったので、加群を定義した2人の名前をとってKraskiewicz-Pragacz加群という用語をあてることにした)。 得られた結果の1つは、KP加群に関連するある最高ウエイト圏がRingel双対性についてよい性質をもつというものである。大雑把にいえば、KP加群に「分解」できるような加群全体の圏を考えると。その上にある種の対称性がある、ということである。また、KP加群のテンソル積のうち特殊な場合について、その加群のKP filtration(KP加群への「分解」)を具体的に構成することもできた。これらの結果が、Schubert多項式の組合せ論についていままでわかっていなかった新しい結果を導くのではないかと期待される。 また、韓国のKAISTで開催された国際学会International Conference on Formal Power Series and Algebraic Combinatorics (FPSAC 2016) や、海外の大学でのセミナーなどで、このテーマについて今までわかっていたことを発表し、海外の研究者と意見交換をして研究対象に対する見識を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に目標としていた問題の1つである、KP加群のテンソル積がKP加群によるfiltrationを持つかという問題は、当初は幾何的な道具に頼らないと解決できないであろうと思われた(問題の肯定的な解決はSchubert多項式の積の正値性を導き、一方この正値性の証明は今まで幾何的な道具を使うものしか知られていなかったため)が、最高ウエイト圏の理論を用いることにより代数的に解決することができた。また、KP加群とそれに関連して定義された最高ウエイト圏について新たな良い性質(Ringel双対の計算、Pieri公式に対応するfiltrationの構成)も得ることができた。
目標としていたもう1つの問題である、Schubert多項式の積の構造定数(一般化Littlewood-Richardson係数)の組合せ論的表示を求める問題については、Kashiwara crystalの理論を用いたアプローチを考えている。量子群の場合でのKP加群のq-類似が作れることが今年度の研究でわかったので、それと結晶基底の理論(の類似?)を用いることでKP加群のテンソル積と組合せ的な対象が結びつくのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
いままでの研究で得られたKP加群に関する結果が、Schubert多項式の組合せ論における新たな結果を導くのか、という問題は興味深い問題である。また、上述の通り、一般化LR係数の問題についても新たな観察が得られているので、この問題にもアプローチしてゆく。 2年目も国内や国外の研究集会に積極的に参加し、自身の研究発表、および関連分野の研究者との意見交換をすすめてゆく。
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Research Products
(3 results)