2016 Fiscal Year Annual Research Report
注意による運動機能への影響およびその作用機序の網羅的解析
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15J05393
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松谷 良佑 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 脳波 / 筋電図 / コヒーレンス / 皮質内抑制 / 反回抑制 / 視覚運動統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚フィードバックによる筋張力保持課題は先行研究で広くおこなわれてきているが、本研究課題では筋張力を示す視覚情報に対して被験者がどの程度重みづけをしているかを定量する必要がある。そこで視覚フィードバックをソフトウェア的に操作し、様々な強度の変位を入れ、被験者にはその変位(視覚刺激)を検出した際に速やかにボタン押下をするよう指示した。20名の被験者に協力していただき、筋張力保持課題中の脳波、筋電図、筋張力の計測をおこなった。運動中には脳波筋電図コヒーレンスの強度変化が見られ、脳波筋電図コヒーレンス強度の高いトライアルでは、視覚刺激の検出閾値が低く、一方で脳波筋電図コヒーレンス強度の低いトライアルでは、視覚刺激に対して張力の反応が大きく観察された。この結果から、脳波筋電図コヒーレンスの高い時には体性感覚へ重みづけされ、脳波筋電図コヒーレンスの低い時には視覚へ重みづけされていることと考えられる。本研究によって、運動中の感覚入力の重みづけという機能が、神経群間の同期現象によって実現されていることが示唆された。 脳波筋電図コヒーレンスは、アスリートと健常成人、神経疾患患者と健常成人など異なる被験者群間での違いが指摘されているが、健常成人の中でも大きく個人差があることが知られている。健常成人内の個人差が生まれるメカニズムについて、経頭蓋磁気刺激および末梢神経電気刺激を用いて検討をした。経頭蓋磁気刺激では、大脳皮質内抑制回路の活動を定量し、末梢神経電気刺激によって、脊髄内の反回抑制回路の活動を定量した。のべ23名の被験者から得られた結果から、これら二つの抑制回路の活動が脳波筋電図コヒーレンスの強度に関係していることが分かった。先天的もしくは後天的に、抑制回路の活動量が異なることで、脳波筋電図コヒーレンスという皮質脊髄路の活動様式が変わることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究課題では三つの研究目的(1.注意と脳波筋電図コヒーレンスおよび運動機能の関連を検討、2.大脳全体を網羅的に解析、3.注意に関わる脳領域と運動機能との因果関係を評価)を軸に検討を進めており、第二年度である平成28年度は研究目的2.に取り組む計画であった。 研究目的1.昨年度の積み残しとして、追加のデータ取得と解析方法の改善があったが、本年度にすべて完了した。ここで得られた研修成果は、国際学会で発表済みで、原著論文として投稿を予定している。 研究目的2.昨年度より、実験系の作成にあたり数名に協力を得て実験を実施した。しかし、当初の目論見のように結果が得られなかったため、計画を大きく変更した。経頭蓋磁気刺激および末梢神経電気刺激を用いて、皮質内および脊髄内の介在神経の活動性を評価し、脳波筋電図コヒーレンスの作用機序を検討した。のべ23名にて実験を行った結果、脳波筋電図コヒーレンスの発生が皮質内および脊髄内双方の介在神経に関わっていることを示唆する結果が得られた。この研究成果は、本年度すでに原著論文として掲載されている。 以上の通り、研究目的1.の検討は完了し、研究目的2.については大きく計画変更を行った結果、成果を挙げている。そのため、研究全体としては概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況に記載した通り、大きく研究計画の変更を行った。そのため、第三年度の研究計画についても変更が必要となる。 これまで得られた研究成果は、あくまで相関の研究であるため、因果関係については言及出来ていない。つまり、「脳波筋電図コヒーレンスを操作することで、感覚重みづけに変化が起きるか」という因果関係を明らかにするため、今後の方針として複数のアプローチが考えられる。脳波筋電図コヒーレンスを操作する手法として、強化学習による内部誘導型、もしくは経頭蓋交流電気刺激などの外部誘導型、が考えられる。 今後は、上記のアプローチの有効性を確認しつつ、研究目的の達成を目指す。
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Research Products
(2 results)