2015 Fiscal Year Annual Research Report
電力潮流を考慮した動的な電力価格決定メカニズムに関する研究
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15J05585
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大川 佳寛 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | スマートグリッド / 電力自由化 / 動的電力価格決定 / リアルタイムプライシング / デマンドレスポンス / H∞制御 / ネガワット取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は平成27年度において,本研究課題の研究目的である「電力潮流と市場参加者の行動不確かさに対するロバスト性を考慮した複数の時間帯域(マルチタイムスケール)市場取引に基づく電力価格決定メカニズムの構築」に対し,次の2点に関する研究を行った. 1、「市場参加者の行動不確かさを考慮したH∞制御に基づく電力価格決定」:本手法ではまず,自由化された電力市場における市場参加者の不確かな電力消費/発電行動のモデル化を行った.そしてこれらの行動モデルに対して,システムの不確かさにロバストな制御手法であるH∞制御に基づいた地域別電力価格更新のための制御器設計を行った.これにより本手法を用いることで,各地域の電力需給偏差解消と市場参加者の行動不確かさによる価格変動の抑制の両立を達成した. 2、「マルチタイムスケール電力市場における動的電力価格決定に基づく分散的電力需給管理」:本手法では,翌日一日の需給計画の決定を行う前日市場と当日の発電誤差に対して電力調整を行う当日市場の2種類の異なる時間帯域を対象とする電力市場における動的電力価格決定に基づいた地域別電力需給管理手法の提案を行った.特に本手法においては,当日市場における電力需給調整に関して,需要家に対して前日市場で決定された電力価格に基づく金銭的なインセンティブを与えることで需要家の電力需要削減を考慮した分散的な電力需給管理手法を提案した.これにより従来の調整用発電設備のみを利用した需給調整手法と比べ,電力需給状況の変化に対して柔軟かつ効率的な電力需給管理を達成した. さらに報告者は本年度において,上記の各手法に対して電気学会東30機系統モデルを用いた数値シミュレーションを行うことで有効性の検証を行った.また得られた研究成果に関しては国内外の学会で発表を行うと共に,それぞれ定期刊行誌へ学術論文として投稿し,現在査読審査中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は当初の研究目的に対しておおむね順調に進展している.その理由として,まず本研究の研究目的は「電力潮流と市場参加者の行動不確かさに対するロバスト性を考慮した複数の時間帯域(マルチタイムスケール)市場取引に基づく電力価格決定手法」を考案することである.この時,本研究目的を達成するために解決すべき課題として,「市場参加者の行動不確かさの考慮」および「マルチタイムスケール電力市場取引の統合」の2点が挙げられる.これに対し,報告者は本研究における平成27年度の研究計画として,上記の2つの各研究課題に対する解決策をそれぞれ考案することを掲げていた. そして報告者は本研究計画に従って,平成27年度において上記の各研究課題に対する解決手法として,1.「市場参加者の行動不確かさを考慮したH∞制御に基づく電力価格決定」,2.「複数の時間帯域(マルチタイムスケール)市場における動的電力価格決定に基づく分散的電力需給管理」の2種類の動的電力価格決定手法の提案を行った.さらに報告者は,これらの各手法に関して電気学会東30機系統電力網モデルを用いた数値シミュレーションをそれぞれ行うことで,各提案手法が市場参加者の行動不確かさに基づく電力需給偏差の低減または複数の時間帯域における電力市場取引の統合に対してそれぞれ有効であることを確認した.また報告者は,これらの研究成果に関して国内講演会および国際会議において口頭発表を行うと共に,本研究内容をまとめた学術論文を定期刊行論文誌に投稿し,現在査読審査中である. 以上より,本研究課題は平成27年度において当該年度における研究計画を達成することができ,従って上記の研究目的に対しておおむね順調に進展していると述べることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策であるが,平成28年度においては,まず平成27年度に行った上記の2つの各研究課題に関して,投稿した学術論文に対する査読結果に従って研究結果の改善を行う.さらにこれら2つの提案手法を統合することで,本研究の研究目的である「電力潮流と市場参加者の行動不確かさに対するロバスト性を考慮した複数の時間帯域(マルチタイムスケール)電力市場取引に基づく電力価格決定メカニズムの構築」を達成する. 具体的な統合方法についてであるが,まず平成27年度前半で提案した不確かさを考慮した市場参加者の行動モデルを,同年度後半で構築したマルチタイムスケール電力市場取引に基づいた電力価格決定メカニズムに適用する.これにより,各市場参加者の不確かさを有する電力消費および発電行動に基づいた電力価格決定問題を複数の時間帯域の電力市場取引で扱うことが可能となり,次世代電力網における効率的な電力需給管理が可能となる.さらに本研究では,上記の電力価格決定問題に対して,地域間の電力潮流方程式を制約条件とすることで,本研究の目的である電力潮流と市場参加者の行動不確かさに対するロバスト性を考慮したマルチタイムスケール電力市場取引に基づく電力価格決定メカニズムの構築を行い,さらにその分散的な最適電力価格決定アルゴリズムの導出を行う.また,本提案手法の理論的な解析として,提案アルゴリズムを用いた際に各地域の電力価格が最適な電力価格へと収束することを証明する.加えて,この統合した電力価格決定手法に基づく分散的な電力需給管理に関しても,電気学会東30機系統電力網モデルを用いた数値シミュレーションによる有効性の検証を行う.そして最後に,上記の本研究によって得られた成果をまとめ,博士論文ならびに定期刊行誌論文の執筆を行う.
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Research Products
(5 results)