2015 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合タンパク質が司る新規細胞周期制御メカニズム
Project/Area Number |
15J05603
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
野口 あや 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | RNA分解 / RNA結合タンパク質 / 細胞周期 / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. リン酸化の生理的意義 ZFP36L2の分解が、C末端領域の3つのセリンによって制御されることを明らかにした。これまでに、490番目と492番目セリンのリン酸化によってZFP36L2とRNA分解因子の結合が制御されることが明らかにされている。本研究では、これらのセリンとは別のセリンをZFP36L2の分解制御サイトとして同定した。これらのセリンはリン酸化修飾を受けることが予想されており、ZFP36L2の分解はリン酸化によって制御されると考えられる。しかし、これらのセリンをアラニンに置換してもウエスタンブロットによるZFP36L2のシフトダウンは観察されなかった。そこで、質量分析によるリン酸化解析を行うことにした。現在、同定した3つのセリンのリン酸化と、細胞周期依存的なリン酸化の解析を行っている。 2. ターゲットmRNAの同定 ZFP36L2は細胞周期依存的に発現量が変動し、過剰量のZFP36L2はS期進行を遅らせる。また、本研究ではZFP36L2の減少が細胞増殖を抑制することを明らかにした。これらのことから、細胞周期制御因子mRNAがZFP36L2のターゲットであると考えた。そこで、mRNAにZFP36L2結合サイト(ARE)を持ついくつかの細胞周期制御因子について、ZFP36L2の減少がmRNA量に与える影響を検証した。その結果、ZFP36L2の発現を減少させた細胞では、複数のサイクリンファミリータンパク質mRNAが増加することを見出した。サイクリンファミリータンパク質は適切な時期に合成・分解されることで細胞周期を制御している。本研究では、ZFP36L2の極端な増加と減少が、細胞周期の広い範囲でサイクリンファミリーmRNAの量的コントロールを阻害し、細胞周期・細胞増殖に影響を与えている可能性を示した
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開始以前に同定していたZFP36L2の分解を制御するリン酸化サイトについて検討し直したところ、異なるリン酸化サイトが同定された。そのため、いくつかの実験についてやり直しを必要とした。したがって、リン酸化解析については当初の予定より、やや遅れている。しかし、質量分析による解析を開始しており、リン酸化の生理的意義の解明に道筋をつけることができた。ZFP36L2ターゲットの同定では、予想よりも多くの因子をターゲット候補として見出すことができ、細胞周期制御におけるZFP36L2の機能解析を大きく前進させることができた。当初、ZFP36L2は主に分裂期で機能すると考えていたが、本研究の結果より、実際には細胞周期のより広範囲においてZFP36L2がmRNA分解を担っていることが明らかにできた。さらに、これまで観察できなかった細胞周期におけるZFP36L2ノックダウンの表現型を観察することに成功した。また、予定していた内在性ZFP36L2を検出する抗体の作製は困難であると判断し、ペプチド抗体を発注することにした。そのため、内在性ZFP36L2の解析が多少遅れるが、研究全体の進行はおおむね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ZFP36L2はp53の下流に位置することが示唆されており、ZFP36L2の過剰発現はS期進行を妨げる。このことから、ZFP36L2がp53経路に関与することが考えられる。また、ZFP36L2ノックアウト個体はある程度発生が進み、ZFP36L2ノックダウン細胞の細胞周期は完全に停止しない。以上のことから、正常な細胞よりも、DNA障害などによりp53経路が活性化した細胞において、ZFP36L2はより重要な役割を果たしていると考えられる。 そこで、ZFP36L2ターゲットとして見出した因子のうち、p53が関与するG1-S期に特異的に発現するものについて重点的に解析を進める。まず、ZFP36L2によって引き起こされるmRNAの量的変化がどのようにタンパク質レベルに影響するかを明らかにする。具体的には、細胞周期依存的なタンパク質量の変動や局在を検討する。さらに、ZFP36L2をノックダウンした細胞でp53経路を活性化し、中心体の複製やDNA損傷への応答にどのような異常が生じるか検討する。また、リン酸化修飾が活性と分解を細胞周期依存的に制御する機構を、リン酸化解析により明らかにする。これらすべての結果を統合し、ZFP36L2の量的制御からターゲットmRNAの分解を介した細胞周期制御までの一連の機構を明確に示す。
|
Research Products
(1 results)