2016 Fiscal Year Annual Research Report
カントの目的論の形成史的研究 ―自然神学批判と二世界論の転換を軸にして―
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15J05615
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
増山 浩人 上智大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | カント / バウムガルテン / ヴォルフ学派 / 自然神学 / 形而上学 / ドイツ哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)2016年4月~7月と2016年9月~2017年2月初旬まで、フンボルト大学ベルリンでの在外研究を継続した。2016年6月9日には、Rosefeldt教授のコロキウムで、論文"God as an ultimate ground of the possibility of things ―Kant's Answer to Baumgarten's natural theology―"を発表した。さらに、M.Willaschek教授の集中講義「第5回ベルリンカントコース」(2016年6月23日~25日)やハレのマルティン・ルター大学での「初期近世哲学セミナー」(2016年11月3日~5日)にも参加した。こうした活動を通じて、現地の研究者との交流につとめた。 2)2016年後期は、カントの自然神学批判に関する研究を集中的に行った。まず、カントの『神の現存の論証のための唯一可能な証明根拠』(1763)における「可能性に基づく神の存在証明」が、自然の合目的性を神の世界への介入の結果とみなす当時の自然神学者を批判するための議論でもあることを明らかにした。同時に、『純粋理性批判』(1781)においても、同書の自然神学批判が形を変えながら残存していることを示した。その成果は、論文「「怠惰な理性」と「転倒した理性」―『証明根拠』と『純粋理性批判』におけるカントの自然神学批判―」にまとめた。同論文はすでに査読を通過し、近日中に出版される予定である。 3)2017年2月26日にカント研究会で拙著『カントの世界論』の合評会が開催された。コメンテーターの中澤武氏と河村克俊氏をはじめ、多くの参加者から今後の研究方針を決定するために重要なコメントをいただくことができた。なお、河村克俊氏による拙著の書評とそれに対する著者の応答文がカント研究会の機関誌『現代カント研究』に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の理由による。
28年度は、Rosefeldt教授のコロキウムでの研究発表とカントの自然神学批判に関する日本語論文の投稿を行った上で、拙著『カントの世界論』の合評会を開催できた。この点で、当初の計画の大部分を達成することができた。
しかし他方で、英語論文の投稿を今年度中に行うことはできなかった。その一番の原因は、2016年4月にN. Stangの新著"Kant's Modal Metaphysics"が出版されたことである。Rosefeldt教授との議論やコロキウムでの研究発表を通じて、現在作成中の英語論文とStangの著書の間には想像以上に密接な関連があることが明らかになった。したがって、英語論文には、Stangの研究に対する言及や批判を組み込む必要がある。しかし、28年度の研究計画を練った際には、Stangの著書の読解時間を計算に入れていなかった。これが英語論文の改稿作業の遅れの原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在遅れている英語論文に関しては、慶應義塾大学のW.Ertl教授のご支援を受けながら、改稿作業を進め、来年度には投稿する。
また、カントの自然神学批判に関してもさらに研究を進めていく。特に、1755年のカントの著作『天界の一般自然史と理論』と『形而上学的認識の第一諸原理についての新解明』にも取り組む。このことによって、1763年の『神の現存の論証のための唯一可能な証明根拠』における彼の自然神学批判の萌芽が、すでに1755年の著作群にも見られることを明らかにする。
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Research Products
(6 results)