2015 Fiscal Year Annual Research Report
先天性腎尿路奇形症候群由来iPS細胞を用いた胎性腎組織尿管芽の発生機構解明
Project/Area Number |
15J06313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠原 朋子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 腎臓 / 発生学 / iPS細胞 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
GATA3のハプロ不全で発症するHDR症候群由来iPS細胞を用いた尿管芽組織への誘導法の確立と発生機構解明に着目した。平成27年度は、HDR症候群患者由来iPS細胞の樹立とヒトiPS細胞から尿管芽組織への分化誘導法の確立を目標に掲げ、研究を実施した。 エピソーマルプラスミドを用いる遺伝子導入法で、患者末梢血細胞からHDR症候群患者由来iPS細胞の樹立を行った。しかし、HDR症候群患者由来iPS細胞は、未分化維持においてコロニー数の減少が認められ、それらの現象はアポトーシス亢進によるものだと見出した。樹立した患者由来iPS細胞の未分化維持が困難であることより、本研究はHDR症候群由来iPS細胞の樹立までとする。 前述の通り、HDR症候群由来iPS細胞の分化誘導が困難であり、尿管芽組織への分化誘導法を確立するには発生学的知見が乏しい。そこで、まず近年発生学的機構が多数報告されている他の胎生腎組織構成細胞であるネフロン前駆細胞の分化誘導方法の確立を第1年次の目標とし、その知見を参考にして尿管芽組織の分化誘導法の開発に繋げる方針を掲げ、研究を実施した。 マウスの発生学知見より、後期中胚葉へ分化するエピブラスト様細胞を作製し、その細胞から発生学的段階を模倣し、後方原始線条細胞、中間中胚葉細胞、SIX2陽性のネフロン前駆細胞へと分化誘導を行った。成長因子や化合物の探索と、使用する成長因子と化合物の適正濃度の検討の結果、60%前後まで高効率にSIX2陽性細胞を作製することに成功している。一方で、本来は平成28年度の目標であった、ヒト多能性幹細胞由来ネフロン前駆細胞の発生生物学、生理学的機能の検証にも着手しており、SIX2陽性細胞がマウスの後腎細胞との器官培養にてネフロン構成細胞への分化や尿細管様管腔構造を構築することを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究目標であった、HDR症候群患者由来iPS細胞の樹立では、樹立した患者由来iPS細胞は、未分化維持においてコロニー数の減少が認められ、それらの現象はアポトーシス亢進によるものだと見出した。樹立した患者由来iPS細胞の未分化維持が困難であることより、本研究は樹立までとしている。 次に、近年発生学的機構が多数報告されている他の胎生腎組織構成細胞であるネフロン前駆細胞の分化誘導方法の確立を第1年次の目標とし、その知見を参考にして尿管芽組織の分化誘導法の開発に繋げる方針を掲げた。マウスの発生学的知見より、発生学的段階を模倣することでヒトiPS細胞からネフロン前駆細胞をより高効率に分化誘導する方法を確立し、さらに、次年度の目標であったヒトiPS細胞由来ネフロン前駆細胞の機能評価を行うことができたことから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は確立したネフロン前駆細胞への分化誘導の各段階の遺伝子発現をマイクロアレイを用いて詳細な解析を行い、腎臓形成に関与する因子や機構解明を行いたいと考えている。
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Research Products
(1 results)