2015 Fiscal Year Annual Research Report
肝クッパー細胞に発現する脂肪酸結合蛋白質(FABP)の機能解析
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15J07172
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮崎 啓史 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | PPARg / トランスジェニックマウス / 脂肪肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでクッパー細胞(KCs)に発現する脂肪酸結合蛋白質FABP7は炎症性サイトカイン産生と貪食機能を制御することを明らかにしてきた。マクロファージは刺激に反応して炎症性の機能を示すM1型と抗炎症性機能を示すM2型に活性化することが知られている。今回、野生型(WT)マウスとFABP7欠損(KO)マウスから単離したKCsに対し、刺激によりM1とM2にそれぞれ活性化させると、活性化マーカー分子の発現がどちらもKOマウスで低下していることを明らかにした。また、貪食機能においてKO KCsはスカベンジャーレセプターCD36の発現が低下していることを報告している。今回新たに、CD36の発現制御因子であるPPARgの発現がKO KCsで低下していることを明らかにした。 KCsの発現制御機構を明らかにする為、KCsのFABP7の発現時期を詳細に検討したところ、食事の経口摂取の開始や肝細胞の索状構造の形成が始まる生後4日目から発現が次第に増加することを確認した。マクロファージ系細胞株と単離肝細胞との共培養や門脈血血清存在下で培養を行ったがFABP7の発現誘導は認められなかった。生体および培養細胞でのFABP7発現調節機構の解明をより容易に行う為に、FABP7のプロモータ領域の活性化によりGFPを発現するトランスジェニックマウスを作製した。 KCsに発現するFABP7が肝機能に及ぼす影響を明らかにする為、WTマウスおよびKOマウスを用いて、高脂肪食摂取により脂肪肝を誘導した。KOマウスとWTマウスでは体重に有意な差は無かった。WTマウスでは高脂肪食摂取により中性脂質と総コレステロールが増加し高脂血症を呈したが、KOマウスはWTマウスと比較し有意に低値であった。肝組織においてWTマウスでは高度な脂質蓄積が観察されたが、それと比較してKOマウスは有意に低く、FABP7によるKCsの機能制御が肝の脂質代謝機能に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
受入研究機関変更に伴い、使用する遺伝子組み換えマウスの譲受・繁殖に時間を要したため、予定よりも遺伝子組み換えマウスを用いた実験を行うことが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージの活性化は解糖系や脂肪酸酸化など細胞内代謝機構と密接に関係している。これまでの研究成果から、FABP7が細胞内代謝機構を制御しKupffer細胞の活性化調節に関与することが推測される。今後、FABP7がどのようにしてKupffer細胞の細胞内代謝機構を制御しているのか解明を目指す。 Kupffer細胞のFABP7発現は、肝組織特異的な環境によって制御されていることが推測されるが、詳細な制御機構や因子の同定には至っていない。今後、作成したトランスジェニックマウスを駆使し、FABP7発現制御機構の解明を目指す。 FABP7欠損マウスでは高脂肪食摂取による高脂血症や肝の脂質蓄積が起こりにくいという現象を明らかにしたが、FABP7がどのようなメカニズムでKupffer細胞の機能を調節し、肝細胞の脂質代謝機構に関与するかは不明である。上記に示すようなFABP7によるKupffer細胞活性化調節機構、FABP7の発現制御機構を明らかにし、本現象の機構を解明したい。
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Research Products
(1 results)