2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J07333
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
寺山 健 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 固体酸化物形燃料電池 / 自動車応用 / アノード排ガスリサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、エネルギー機器の高効率利用が求められており、高効率かつ多様な燃料を使用可能な固体酸化物形燃料電池(SOFC)を自動車に応用することにより、自動車の効率向上が期待できる。しかし、SOFCは自動車における負荷変動を想定した開発が十分に行われておらず、負荷変動に対する応答を解析し、負荷変動に対応したシステムを構築することが必要となる。そこで本研究ではSOFCの発電特性、及び応答性の解析を行う。そしてその結果に基づき、自動車用SOFCシステムモデルを構築し、期待できる性能を予測する。 本研究では水を別途車に搭載する事を避けるため、水供給無しでSOFCの効率向上が可能となるアノード排ガスリサイクル(AGR)を適用したSOFCシステムについて検討を行った。 このシステムは構造が複雑なことからセルレベルでのAGRの効果の解析が十分でなかったため、実際にAGRを行うことなく精確にAGRを模擬できる装置を開発し、測定と計算によりAGRによるセルの効率向上とそのメカニズムを明らかにした。結果、AGRを行った場合、電流密度分布が均一になる等により発電効率が2~4ポイント程度向上することが判明した。 また、SOFCの過渡応答性について検討を行った。SOFCは出力増加時に燃料や電流を急に増やすと、リサイクルガスの不足による炭素析出や、燃料がセルに到達するまでの遅れに起因する燃料枯れが起き、運転を継続できなくなる。そこでSOFC内の熱・物質移動の解析を行い、炭素析出を起こさない条件を明らかにした。また、AGRを行う場合、セルから出た未燃燃料の一部がリサイクルされ、新たに投入された燃料と共にセルに供給されるため、燃料利用率90%であっても従来の水蒸気改質型SOFCにおける燃料利用率73 %に相当する条件でセルは動作し、燃料枯れまでの余裕を増やせると共に過渡的には電流値を20 %程度増やせると判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでSOFCの自動車への適用を想定し、水供給なくシステムを自立できると共に効率向上が可能となるAGRについて、その発電特性と過渡応答性を解析してきた。AGR運転時のSOFCの発電特性については測定とシミュレーションにより、当初の想定よりも詳細に解析でき、AGRによる効率向上とそのメカニズムを明らかにすることに成功した。 SOFCの過渡応答性解析については進捗に若干の遅れが見られるが、炭素析出や燃料枯れを起こさない条件など、システムに課せられる制約条件について重要な知見が得られており、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続き過渡状態におけるシステムの運転方法を検討し、検討結果に基づいてSOFCの応答性解析を行う。具体的には、燃料枯れを回避できる運転条件をより明確にし、燃料枯れや炭素析出が起きない条件でAGR運転時のSOFCシステムの応答性を解析する。また、SOFCスタックの構造が燃料枯れの条件等に及ぼす影響についても検討したい。 さらにこれらの解析結果に基づき、SOFCシステムの自動車への適用を検討する。具体的には大型トラック用の補助電源用途を中心にSOFCシステムの構成を検討し、これによりSOFCを自動車に搭載する事による効率向上の度合い等を明らかにする。
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Research Products
(3 results)